- 北韓側が追加挑発すれば、完全な海上および国境封鎖作戦へ進む
- 米国は、強力な対北制裁・圧迫だけでもレジームチェンジが可能と判断
- 文在寅の「調停者論」は米日韓同盟から離脱するという意味。
Why Timesの情勢分析 2019-04-25 10:53:17修正2019-04-25 11:07:03
▲在韓米軍が平沢基地でTHAAD展開訓練をした事実を公開した。北韓側の脅威に強力に対応する意志と見られる。【在韓米軍のフェイスブック]
さらに強化される対北監視戦力
去る2月のハノイ会談の決裂直後、米国の対北監視と圧迫の強度が日増しに強化され、北韓の息の根を締めている。特に、北側が米国のビッグディール要求を拒否したため、米国の対応強度も高まっている。
注目すべき点は、対北制裁回避のための北韓側の瀬取り(海上積み替え)に、米国と友邦の海軍戦力が続々と集結していることだ。目標は公海上で北韓船舶との瀬取りを禁じた国連安保理決議(UNSCR)の積極的遂行だ。
今、韓半島周辺には米軍のインド・太平洋司令部の指揮の下、英国、オーストラリア、カナダ、ニュージーランド、フランスの軍艦が作戦に参加しており、日本はこの作戦基地の提供と海上監視の先鋒に出ている。韓国は当事者でありながらも消極的に対応している。
米軍インド・太平洋司令部の訓練は、いつでも対北攻撃へと転換できる強力な戦力が目立つ。米沿岸警備隊所属の4500t級の艦艇であるボソルプ艦も韓半島海域に投入されている。もちろん、海軍戦闘艦よりは武装が落ちるが、海上監視には最適と言える。
▲米沿岸警備隊所属ボソルプ艦が韓半島周辺海域に展開している。[写真:ウィキペディア]
バソルプ艦の韓半島海域投入は、米国の意志が込められている。つまり今の状況では、北韓に対する軍事行動の前に、徹底した海上封鎖を通じて北韓の息の根を止めるという意味だ。米国はすでに、これまでの強力な対北制裁が北韓を危機に追い込んでいると判断している。
北側が海上での瀬取りなどもできなくなれば、金正恩は決定的危機に直面すると見ている。そのため軍艦ではなく本土の海洋警備艦を作戦に投入したのだ。
バソルプ艦には57㎜機関砲1門、20㎜近接防御システム1門、50口径の機関銃4丁、7.62㎜機銃4丁、ヘリ2機、ドローン4機を搭載できる。時速52㎞(28ノット)以上で疑われる船舶を追跡し、ドローンで近接監視し、ヘリコプターを動員して検索することもできる。
英国は対潜水艦作戦も可能な4900t級の護衛艦モントロズを派遣して作戦に参加している。
フランスもフリゲート級護衛艦のバンデミエル艦を派遣して海上作戦に参加している。この艦艇も76mm砲1門、エグゾセ対艦ミサイル8発、対空ミサイルが装備されている。
オーストラリアも乗組員230人の護衛艦「HMASメルボルン」を送って米国の海上監視を支援し、カナダは潜水艦まで派遣した。
インド-太平洋司令部の「北韓の絞殺作戦」には海軍戦力だけでなく、空中監視戦力も強力な態勢で作戦を遂行している。
▲RC-135VWリベットジョイントは、信号情報(SIGINT)だけでなく電子情報(ELIT)、通信情報(COMINT)を傍受し敵の位置・意図や敵の脅威活動を把握する。[写真:ディフェンスタイムズ]
まず目立つのは、米空軍の信号情報(SIGINT)偵察のRC-135Wリベットジョイント(Rivet Joint)だ。この偵察機は3日、米国本土から沖縄の嘉手納基地に展開された。リベットジョイントはすでに作戦中のRC-135Sコブラボール(Cobra Ball)とRC-135Uコンバットセント(Combat Sent)と一緒に北韓全域に対する空中監視と同時に海上情報も監視している。
特に、コブラボールは弾道ミサイルの軌跡を追跡する機能を持ち、北韓の挑発があれば直ちに対応でき、RC-135コンバットセントはレーダーなど敵の防空網を分析する。
要するに、米空軍第55飛行団所属の最高の偵察戦力を沖縄基地に展開し、北韓の動向を手に取るように監視している。
さらに、フランスも3月中旬、ファルコン200海上哨戒機を追加派遣した、オーストラリアも昨年4月、P-8Aポセイドン海上哨戒機を展開した後、同年9月AP-3Cオリオン2機を追加派遣して作戦を支援している。
ニュージーランドもP-3K2海上哨戒機を日本に派遣し、カナダ軍も海上哨戒機を派遣した。
韓国だけが抜けた状態で軍事対応能力も強化
このように徹底した海上監視網と情報戦を強化しながら、米国は攻撃力強化のための訓練も増やしている。在韓米軍が最近、8軍司令部がある平沢のキャンプ・ハンプリスでTHAAD展開訓練を実施したのが代表的な例だ。これも意図的に訓練状況をフェイスブックで公開した。北韓に対する圧迫だ。
THAADは韓国内では慶北星州に配置されているが、今回の訓練は星州ではなく、平沢で行ったことが重要だ。星州のTHAADが釜山を通じて韓半島へ進入する在日米軍保護用なら、平沢のTHAADは平沢基地を直接保護するための配備だ。
平沢基地でTHAAD訓練をしたことは、平沢にTHAADの追加配備の必要性を意味する。文在寅政権は極端に嫌うだろうが、最近、文在寅政権対する米国の圧力が強化された時点であるため、公然と反対するのは難しいと思われる。
実際、米軍は、独自の判断に基づいて、北側の挑発危険が大きくなれば直ちに、在韓米軍などを保護するためパトリオットPAC-3はもちろん、THAAD1〜2個砲隊を韓半島に緊急追加配置すると見られる。THAAD砲隊の緊急展開はC-17輸送機でわずか数日で可能だ。
そして、米国の攻撃力強化も着々と進んでいる。韓半島有事の際、米海兵隊兵力の韓半島への投入に使われるMV-22オスプレイなど米海兵隊の航空機が去る3月、ハワイから韓国に展開されて連合訓練を実施した。この事実も米軍が意図的に公開した。
この訓練には米海兵隊はMV-22 4機とCH-53の4機を含めてAH-1Z攻撃ヘリ4機、UH-1Y偵察・機動ヘリ2機などが参加した、これまでこのような訓練は、在日米軍が参加するのが慣例だった。なのに、ハワイから直接空輸したのは、韓半島有事の際の作戦に、ハワイ兵力まで追加で増員するという意志を見せたのだ。
米国が在日米軍はもちろん、日本の自衛隊との合同軍事訓練を強化しているのも、米国の断固たる意志が明確に表れている。
そして、米国の外交安保当局者たちも対北圧迫メッセージを相次いで出している。これは単に政治的なメッセージではなく、事実上の警告に近い。
デビッド・スティルウェル米国務省東アジア・太平洋担当次官補指名者は3月27日、上院外交委員会の承認聴聞会で、「われわれ(北韓に)十分騙されてきた」と言い「完全な非核化まで制裁を続ける」と述べた。国務省東アジア太平洋次官補は韓半島問題を総括するポストだ。
スティルウェル指名者は「われわれは北側の言葉だけを信じて後退しない」と言い、米国の安保に最も重大な課題を問う質問に対して「北韓の核・ミサイルプログラム」と述べた。
ロバート・エイブラムス在韓米軍司令官も3月27日、米下院の聴聞会で「軍事力の側面で検証可能な北側の変化はほとんどなかった」と断言し、ランドール・シュライバー国防総省アジア太平洋安保担当次官補も「北韓の危険な行為は続いている」と強調した。
さらに、パトリック・シャナヘン米国防長官代行は「(北韓との)戦争が起こる場合、断固として勝利する」と確言し「去年‘韓半島態勢(Korea readliness review)’作戦で、戦争初期60日間に必要な詳細な物流計画を含めて訓練した」と言った。
ボルトン補佐官も3月10日、「瞬きもせず、北韓を見ている」と言い「北韓をインチ単位で把握している」と警告した。それほど米国は今、断固として対北戦略を展開している。
米国の最大圧迫、事実上海岸封鎖までの可能性
米国のこのような対応は、金正恩が核を放棄しない場合、北韓のレジームチェンジ(政権交代)も辞さないという意志として見られる。
金正恩政権の交替は戦争をしなくてもいくらでも可能というのが米国の判断だ。既往の対北圧迫でも北韓は今、最悪の状況なのに、北韓が米国のビッグディール要求を拒否し続けるなら、2段階の対北圧迫へ進むというのが米国の意志だ。
2段階の圧迫は、海上封鎖レベルの圧迫で、中国と北韓の国境も封鎖する方法を検討していると見られる。
中国はすでに米国の対北圧迫案に同調しており、対外的には脱北防止のための国境監視の強化というが、実際は北韓の全面封鎖を勘案した準備というのが大方の見方だ。
そうなれば、戦争をしなくても金正恩政権を倒せるという計算が出てくる。
問題は韓国だ。文在寅政権が「調停者論」を持ち出したのは事実上、日米韓三角同盟から離脱するという意味だ。
しかし、ダン・ゴツ米国家情報局長の訪韓と4月の韓米首脳会談を通じて米国が文在寅政権に厳しく警告した状況で、文在寅政権もむやみに「無条件対北支援」は難しいと思われる。
今、韓半島は巨大な渦巻きの真ん中だ。これが現実だ。