李春根

 昨年の5月、米国ワシントンで開かれた学術会議で米国のある国際政治学者が“中国の外交は理解できない”というのを聞いた。じっとしていても良いはずなのに、つまり力が増したからじっとしていても近隣の小さな国々が進んで屈服するはずなのに、なぜ彼らを脅し、脅迫して、周辺の国々が逆に米国ともっと緊密な関係を持つようにするかが理解できないという話だった。

 国際政治学の最高、最大の理論である勢力均衡理論によれば、脅威を受ける国々は自分の力を増強させるため努力するか互いに連合して力の強い相手の脅威に対処するため頑張るものだ。中国の力が強くなれば近くの国々は当然軍事力の近代化、究極的には核武装を通じて自国の力を増強させ、あるいはそれがうまくいかないときは、中国の脅威を抑えてくれる同盟国を求めることになる。

 大人しく行動してもそうなるのに、力が増した中国がまるでならず者のように振る舞えば、周辺の国々は当然のこと、中国に対抗するための措置をとる。既に中国からの脅威を受けていると考える日本、インド、ベトナム、フィリピン、オーストラリア、シンガポールなど、ほとんどの東南アジア諸国は相互間、あるいは米国との協力関係を強固にしている。

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 これらの国々は皆、米国との関係を深める一方、相互の安保協力関係も大幅に増進させている。フィリピンとベトナムの海軍協力、日本とインド、日本とオーストラリアの協力関係は、インドとオーストラリアが日本から潜水艦の購入計画を樹立するほど進展した。そうでなくても、中国の浮上に対策が必要だった米国は、中国の周辺の国々が互いに力を合わせて中国の力と均衡を取ろうと努力する一方、個別的に米国との関係改善を求めるため思わぬ人気を得ているほどだ。

 東西冷戦が終わった後、米国の駐留がもはや必要ないと米国を事実上追い出したフィリピンは今、米軍の再駐留を懇願する羽目になった。

 現代国際政治学の観点を持った米国学者が中国の外交行動を理解するのは難しかったはずだ。筆者は、中国の外交行動が理解できないと言ったその米国人学者に中国人の国際政治観を説明してあげた。

 筆者の博士学位論文は‛中国的世界秩序下の戦争’(War in the Confucian International Order)で、当時、筆者の指導教授だったJack S. Levy教授の博士論文‛現代の強大国国際政治体制下の戦争’(War in the Modern Great Power System)の東洋版と言えるものだった。リビー教授は主に西洋歴史に現れた強大国の国際体制での戦争を分析したが、彼の論文に東洋の戦争は含まれていなかった。

 筆者はリビー教授の分析技法を援用して東洋、つまり中国が支配していた世界を儒教的国際秩序と定義し、その世界で勃発した戦争の原因とパターンを分析した。西洋の戦争と東洋の戦争の間で現れる類似性がもっと多かったが、特異な違いがある事実を発見し、このような違いは中国人たちの世界観から来るものであるという事実を指摘した。そして、中国人たちの独特な国際秩序への観点は、今日もそのまま現れている事実が分かった。

 西洋人たちは国家あるいは個人がたとえ力に格差があっても同等の実体として扱われるとき、彼らの間で平和と秩序が維持できると考える。それで、人間と社会の水平的な平等概念が西欧的秩序観と平和観の軸をなす。その例として、UN総会はすべての加盟国が一票を行使することになっている。弱小国のジンバブエも超大国の米国も一票だけだが、これはまさに西欧的秩序観、平和観に基づいたものだ。もちろん、現実を反映して強大国クラブである安保理があるのはある。

 ところが、中国人たちが見るには、人間社会や国際社会においての水平的平等とは、無秩序や混乱をもたらす概念だ。どうして王と臣下が同等で、父と息子、夫と妻、兄と弟の間に水平的平等関係が存在できると言えるのか?そんなことはただ禽獣の社会でこそ可能なことだ。人間社会では、各人間は自分に与えられた社会的な場がある。自分が置かれた場で、自分に与えられた役割を誠実に遂行することが秩序と平和の根源だ。儒敎の教えがまさにこれで、漢時代以来、このような社会秩序観は国際政治にも適用され始めた。中国という名が物語るように、中国は普通の国ではなく世界の真ん中にある国だ。また、中国人たちが自らをさすとき使う言葉の中華が意味するように、自分たちは他のすべての国々とは違って真ん中で輝く国だ。

 中国の王は、人間と天をつなげる天の子(天子)だ。天子は中国だけを統治する人ではなく全ての人間世界を支配する者だ。中国が考える理想的な世界は、中国を欽慕するすべての国が天子の支配と教えを受けるそういう世界だ。そのような世界では、他国の人々は人種や肌の色に関係なく、皆が四海同胞だ。皆が天子の息子や娘たちになれるのだ。

 このような平和と秩序の世界を作るため、中国は国際政治を西欧式の国際政治とは全く異なる方式で構成した。つまり、中国を欽慕する周辺の小さな国々を中国に朝貢を捧げる国々にしようとした。小さな国々の使節は、良い特産品を持って中国の天子を訪ね、床に鼻をつけるお辞儀をしなければならず、中国はそうする国々の王の権威を認めてあげた。朝貢冊封の関係がそれだ。

 中国から見れば、中国に朝貢を捧げる国々は中国の文明圏に入って利益を得る国々で、遠い辺境の国々は中華文明の恩恵を得られないまま野蛮族に残っている可哀相な国々だ。

 もちろん、中国に朝貢を捧げる国々の王は、中国の天子のように皇帝を称してはならない。位が低い指導者だから王、あるいはそれよりも低い位と称さねばならない。朝貢を捧げる国の王権の正統性と権威は中国からくるものだからだ。

 中国は朝貢を捧げる国々を侵略しない。言うことを聞かない場合は、時々懲らしめるだけだ。それで、中国人たちは、戦争という用語を使わない。中国と中国に朝貢を捧げる国との間の戦いは、独立した実体同士の戦いではないため戦争とも言えない。中国人たちは、戦争で勝ち負けの基準も違う。言うことを聞かない小さな国に大きな教訓を与えたと自ら思われたら、その戦争は勝った戦争だ。

 1979年、ベトナムを侵略してひどい目に遭いもっと多くの人命被害を出した中国が‛ベトナムに教訓を与えた’と駄洒落を飛ばしながら撤退した様子は中国的国際秩序の観点から自然に出てくる行動だ。当時、米国はベトナム軍に中国軍の攻撃ルートを正確に教えてあげ、ベトナム軍は中国軍を容赦なく攻撃できる。

 何れにせよ、中国は周辺の多くの国々を朝貢国にすることで、中国的国際秩序を形成しようと努力した。それが中国人の考える国際平和のための最も望ましいことだったからだ。現代の言葉で言い換えれば、中国は‛力の不平な関係を制度化’しようとし、力の不平等関係が制度化された国際関係は中国の立場から、実質的に最も平和な国際関係になり得る。

 朝貢国は法的に屈服したから主人に立ち向かえず、主人である中国は小国を侵略すべき名分が法的になくなるはずだ。小国は大国に事大し、大国は小国の面倒を見る字小事大の関係は、自国が大国である限り、中国人が考える最も理想的な国際関係だ。この頃、韓国を訪れる中国人たちが自分を大國、韓国を小國というのも長い間に形成された中国的国際秩序の観点から由来するものだ。

 問題は21世紀の現代国際政治は西欧式ウェストファリア体制、つまり、権力政治体制に基本を置いているという点だ。中国周辺のほとんどの国々は、中国を過去のように中華の国と見ていないし、しかも、彼らは過去100年以上、主権や独立の概念を体得して生きてきた。これらの国々は今日、中国に屈服するよりは対抗することで独立と主権はもちろん、安保が保障されると考えそう行動している。

 最近、海上自衛隊の高級将校出身の日本人学者が“中国人たちが自らを過信(overconfident)している。しかし、日本は中国に勝てる”と言うのを聞いた。また、ベトナム人の国際政治学が“われわれの力だけでも中国の脅威に対処できる”と言うのも聞いた。中国の脅威に屈しないという、ベトナム人と日本人たちの決意と言えよう。

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 ところで、大韓民国の場合はどうか。数日前にソウルを訪問した中国国防長官が議題にもなかったサド(THAAD)問題を持ち上げたという。韓国を見縊ってのことか。彼の目には今日の韓国が朝貢国のように見えたのか。中国はもはや大韓民国の国防政策も指図できる国になったのか。THAADは技術的にも全く中国が何とも言えない、中国に何の害を与えない防御システムだ。

 筆者が好きな同僚学者の文である。同じ考えなので引用する。“いつからわれわれはわが国の国防態勢の強化について、中国の助言を聞かねばならず、彼らの立場を考慮せねばならなくなったのか.....われわれの立場と地位、そして自画像がただ寂しいだけです。”(国民大学の朴輝洛教授の文から)

 ⋆未来韓国2015年2月第2号の李春根博士の戦略物語に掲載されたものです。

http://blog.naver.com/choonkunlee/ 2015/02/22 12:38

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  1. 日本人の見解 2016/03/11 16:32  コメント固定リンク  編集/削除  コメント作成

    李春根博士と言う人は現実を良く把握した合理的思考の持ち主だと思う。
    一般的に韓国のマスコミインテリに良く見られる偏見やバイアスの掛かった思い込み強弁、幻想妄想等が無く、クールで客観的優れた学者だ。