洪熒

 韓国の生存環境

 韓国の安保状況は1年前には考えられなかったほど急速に悪化している。韓国は1953年7月に調印された停戦協定以降、最も深刻な安保上の危機に直面している。そもそも、韓半島の今の分断固着は、スターリンと毛沢東と金日成の南侵戦争の結果としてできたものだ。ところで、この「1953年体制」を平壌側と中国共産党政権が力をもって変えようとしている。北韓は韓半島の平和装置をすべて無力化させた。大韓民国がいま接している大陸勢力は、平和と共栄を否定し屈従を強いる全体主義だ。

 核弾頭爆発実験を成功させた北側は、ICBM(大陸間弾道弾)用のエンジンを開発し、SLBMの発射能力も証明した。北韓の核兵器体系の完成は時間の問題だ。北側は遠からず核潜水艦も保有する。北韓は核兵器体系のほかにも、韓国に対して別の非対称武器を持っている。世界最大規模の特殊戦部隊-第3世代戦争を可能にする「偵察総局」だ。

 国際社会は北韓の非核化に失敗した。中国は米国との対決構図が続く限り、北韓を放棄しない。一方、米国は孤立主義に回帰している。韓国の安保と経済発展の根源だった韓米同盟はいま重大な挑戦に直面している。北韓の核武装で韓半島には戦争の影が濃く垂れている。

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 韓国が生き残る道は、大韓民国の独立と尊厳を否定する金正恩体制を除去するか、北韓と中国を抑制する決定的な抑止力を持つしかない状況だ。中国が金正恩体制を庇護する限り、そして米国が韓国を救うため自国が核攻撃されるリスクを甘受しない限り、韓国は結局、独自の核武装以外には生存の道が見られない。「韓半島の現状変更」はもはや避けられない。以下、これをもっと詳細に説明する。

 韓半島の分断固着の経緯と「1953年体制」

 韓半島の分断と分断固着はスターリンの野望によるものだった。スターリンは、第2次大戦で戦勝国になった後、米国に挑戦した。「6.25戦争」(韓国戦争)は20世紀後半の国際秩序の方向を決定した歴史的な戦争だった。この戦争はスターリンがヤルタ体制への挑戦であると同時に、米国と毛沢東を戦わせて両国を疲弊させるため企画した戦争だった。韓国は米国の全面支援でこの共産主義の挑戦を克服し、韓米同盟を通じて自由民主主義と自由市場経済体制を発展させてきた。ところで、今この「1953年体制」が決定的な挑戦に直面している。

 今、韓半島の平和装置はすべてが死文化した。北側は、韓半島の非核化合意(1992年)はもちろん、南北間の平和的共存を謳ったすべての合意を破棄した。金正恩は核兵器を絶対放棄しないと誓っている。国際社会はもはや北韓の核問題を対話で解決できるという幻想を捨てねばならない。北韓は潜水艦発射ミサイルの発射能力を立証(8月24日)し、核弾頭爆発実験に成功(9月9日)した。残ったのICBMと核潜水艦を建造、確保することだけだ。韓国は、北側の核兵器体系の完成で、安保態勢を根本的に変えなければならなくなった。

 米国は、東西冷戦で勝利して西欧文明を護ることに成功した。そして、今は崛起する中国の挑戦を抑える戦略的構図の構築に取り掛かっている。米国の対中国包囲網構築は、20世紀での対中封鎖より順調に見える。だが、米・中の戦略的対峙は韓国の安保環境が厳しくなることを意味する。韓国は東西冷戦のとき西側の最前線として多くの負担を甘受してきたが、新しい米中冷戦でもまた最前線に立たされたのだ。

 北韓の脅威

 世界で大韓民国ほど安全保障の負担が大きい国はない。イスラエルも韓国に比べると安保の負担は少ない。北韓の対南戦略、非対称戦略はそれなりに合理的な選択だ。韓国の45分の1に過ぎない経済力を持って、韓米同盟に立ち向かえる在来式軍事力の近代化は不可能であるからだ。北韓は非対称戦略、非対称兵器として核兵器を作る選択をした。そして、全面戦争を回避しながら、韓国を圧迫し、韓国の「レジームチェンジ」を追求するためゲリラとテロ戦争、そして第4世代戦争の遂行能力を持つ非対称戦力として特殊組織を整備した。今年の5月、平壌で開かれた朝鮮労働党第7次党大会は、北韓が分断71年間、韓半島全体を赤化する目標をまったく放棄していないことを確認する行事だった。

 一方、韓国社会は未曾有の安全保障の危機の中で分裂し大混乱に陥っている。これは、今年の7月、韓国内にTHAAD配置が決定された後の状況を見るだけでもわかる。経済的には北韓を圧倒する韓国だが、政治、軍事的対応策を見いだせずにいる。世界最強国の米国との軍事同盟も、この問題を解決できずにいる。韓国がイスラエルのように行動できないのは、韓国とイスラエルは違うためだ。韓国は貿易(経済)の多くを敵の同盟(中国)に依存している状況だ。そして、韓国がイスラエルのように行動できない決定的な理由は、韓国内に敵は内通する、内部の敵があまりにも多いことだ。金正恩の「3大非対称戦力」は、大量破壊兵器(核ミサイル)とサイバー戦などを遂行する「偵察総局」と韓国内の北韓同調勢力- 從北勢力だ。この点については後述するが、要するに韓国は北韓との政治戦争で敗れているのだ。

 「偵察総局」は、金正恩が後継者として決定されたとき一緒に作られた。偵察総局長の金英徹が特殊部隊など非正規戦と政治戦争を結合した、特にサイバー戦争などをすべて指揮する。北韓で対南工作(韓国赤化)を総括する労働党「対南秘書」(去る5月の労働党7次党大会で「秘書局」が「政務局」に名称が変わり「対南担当政府局副委員長」となった)は1966年以来、8人だ。この中で現役大将として「対南秘書」となった人物は2人。つまり、1968年1月21日、朴正煕大統領を殺害するために特殊部隊をソウルへ送った許鳳学と現在の金英徹だ。

 実はこの二人には共通点がある。まず、許鳳学が指揮した「対南事業総局」と金英徹がいま指揮する「偵察総局」の性格だ。両組織は、軍が中心となって党の対南工作組織まですべて網羅して構築した戦時体制だ。「対南事業総局」は、金日成が1960年代半ば、米国がベトナムに深くかかわった隙を狙って、韓半島から第2の韓国戦争を起こすため作った組織だ。当時、毛沢東は金日成が要請した南侵戦争を許可せず、韓国をゲリラ戦場にするように言った。これにより、冬季ゲリラ戦が試みられ、韓半島で最も寒い1月にソウルの大統領官邸攻撃が試みられた。金日成はサイゴンが陥落した後、再度北京に行って毛沢東に南侵構想に対する諒解を得ようとしたが、米国との関係改善を追求していた毛沢東がやはり許さなかった。

 北側の対南戦略の最優先目標は、韓-米-日を分断させることだ。日本では、多くの日本人が韓国の「反日」について不快に思い理解できないと言う。もちろん、多くの韓国人自身も理解できない。だが、韓国でもっと深刻な問題は「反日」でない。「反日」と比べられないほど深刻なのが「反韓」や「反米」だ。今回のTHAAD事態を通じて明らかになったTHAAD配備への反対を見ればわかるはずだ。韓国国会の過半数を超える第1党と第3党がTHAAD配備に反対している。国会の過半数を占める二つの政党が、敵の核ミサイルから国民を護るため国防費を増やすどころか、敵の核ミサイルから自らを護ってくれる防御武器の配備を中国の顔色を窺いながら反対するのが韓国の「進歩」、左翼、従北-親中事大主義者たちの正体なのだ。

 つまり、THAAD配備反対勢力の背後は、金正恩独裁体制を庇護してきた中国共産党だ。北韓の対南工作によって作られた従北反逆勢力の背後が中国共産党であるため、從北=親中・從中と言えよう。

 韓半島に垂れた戦争の影

 韓半島の戦争の可能性を考えてみよう。北韓が韓国を攻撃するとき、その最先鋒は偵察総局だ。もちろん、偵察総局はすでに韓国に対するサイバー攻撃を日常的にやっている。朝鮮労働党文化交流局(旧「225局」)は、今年の夏から16年ぶりに韓国への乱数放送を再開した。

 韓国当局は8月31日、労働党の「対南総責」である金英徹・労働党副委員長兼統一戦線部長が地方で労役を通じて思想再教育を受ける「革命化処罰」を受けてから最近復帰したと発表した。「金英徹が高圧的な態度を見せ無理に党統一戦線部の権限拡大を進めるなど、権力を濫用した疑いで革命化処罰を受けた」と言った。特に革命化の過程で、対南事業と関連した実績が不振だと強く叱責された金英徹が「実績を出すと誓約書を書いたと聞いている」と言い「金正恩に忠誠心を証明するため、対南挑発に出る可能性が高い」と述べた。韓国当局は韓国人に対する北側の拉致やテロを憂慮している。

 さらに韓国に不利な要素は同盟である米国の変化だ。共和党の大統領候補であるトランプは、米国の対外戦略を見直すと公言した。特に、韓米関係について軍事、経済などすべての面で見直しをするものと見られる。駐韓米軍駐留費を韓国が100%負担、駐韓米軍撤収の検討、韓国の核武装容認検討などを公言した。多くの米国国民がトランプの主張を支持している。

 何よりも、韓米の信頼関係が揺らいでいる。韓国は米国に疑問を持ち、米国は韓国に疑懼の念を抱いている。

 韓国は、米国が北の核問題を解決するため、北韓側と妥協する可能性、ないし北韓を核保有国と認める可能性を憂慮している。内外の専門家たちは、米国が韓国を救うため米国が核攻撃を受ける状況を甘受する可能性はないと考える。つまり、米国の「核の傘」は平壌側の核武装によって無力化されると考えているのだ。

 一方、米国は韓国が中国に傾くのではないか、韓国に再び左翼政権が登場したら韓米軍事同盟体制が維持され得るのか、そして韓半島が統一後も非核化が維持されるのかを疑っている。

 金正恩は果たして戦争を決心するだろうか。歴史的に生存が脅かされる国々はそれを打開するため極端な選択をした。太平洋戦争の日本も、米国の石油禁輸措置に反発して対米戦争を選択した。

 平壌側、いわゆる「憲法」と憲法よりも上位の労働党規約に核武装を明示した。ところで、北側が一人独裁、暴圧体制を維持するため核保有を正当化するなら、すべての国に同じく核武装の権利がある。そして、韓国こそNPT条約上、NPTから脱退する権利をある。

 金正恩はこの7月末、副首相を銃殺した。自分が演説の中にメガネを拭いていたという理由だった。金正恩はすでに理念や路線、政策能力と実績、あるいは忠誠心などを理由に粛清するのではなく、「不遜な」態度や単純な疑いで人間を昆虫のような殺している。このような体制の存続を認めるべきか。自分が演説の中、居眠りをしたという理由で、自分が総参謀長や人民武力部長(国防相)に任命した者を銃殺する暴君が核兵器を持つのを放置すべきなのか。このような暴君が韓国を占領すればどういう状況が起きるだろうか。

 問題は国際社会には暴君に対する制裁に微温的は国があるという点だ。国連安保理の常任理事国である共産党一党独裁の中国だ。中国が核武装した北韓の主張を認め、庇うなら、北韓と中国の脅威と圧力の下にある国々は核武装を通して、あるいは核同盟を通じて生存を図らねばならない。

 1980年代以降、核兵器を拡散させた主犯の一人が中国だ。鄧小平は米帝国主義に対抗する勢力を強化するため核兵器を拡散させた。そして平壌側をこの核拡散に利用した。中国は北韓と同盟を結んでいるため、北韓の核兵器は中国には脅威にならない。

 北韓の事実上の核武装がなされたという状況に対応して、韓米連合司令部は昨年、韓半島で全面戦争勃発したときの連合作戦計画を全面修正した。新しい作戦計画(OPLAN-5015)は、北側の全面攻撃が確実であると判断される場合は、先制攻撃で敵の致命的な脅威を除去すると知られている。北側から先制核攻撃を受けた後の反撃は不可能か、意味のない反撃になるからだ。

 韓国の「内戦」

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 最近、韓国社会では「建国節」制定運動が起きている。信じられないかもしれないが、今韓国は国家の誕生日がない。韓国で起きている歴史教科書の戦争- 歴史認識の戦争の核心がまさにこの問題だ。この問題は韓国で左右を区分する決定的基準となっている。来年末に予定される次期大統領選挙の最大の争点になる可能性が大きい。韓半島では1948年8月15日、初の共和国・大韓民国が建国された。ところが、多くの日本人も、韓半島の分断固定化が、この大韓民国の建国のためだったという平壌側と国際共産主義陣営の偽りの宣伝を今も信じている。

 もちろん、韓半島の分断は日本軍の武装解除のために米・ソが分割占領をしたことではじまるが、スターリンは、ロンドンでの戦勝国3外相会談(1945年9月)で、日本分割占領の要求が米国によって拒否されるや、直ちに北韓を占領している赤軍に社会主義政権樹立を指令(1945年9月20日)し、これを看破した李承晩によって、米国のような自由民主主義建国革命として大韓民国が建国されたのだ。韓国の「進歩」、左翼、従北、反米、親中勢力らは自由民主主義建国革命を認めるわけにはいかないため、1948年8月15日の建国歴史を拒否する。

 韓国の選択

 韓国は韓米同盟に過度に依存して独自の国防力建設が不足した。米国は、韓国戦争のとき韓国を救うため54,246人の将兵が戦死した。韓国軍は、韓国戦争とベトナム戦争で11年7ヶ月間、米軍と一緒に戦った。だが、ニクソンショックのとき、米国は韓国軍がベトナムで約5,000人が戦死し、戦闘が続いている状況にもかかわらず、米国大統領は事前に何の協議なしに韓国から米軍1個師団を撤収させた。強大国の政治がどのように行われるかを韓国民が痛感した瞬間だった。共和党の大統領候補・トランプは韓国に対して、在韓米軍の撤退と、必要なら韓国の核武装を許すような発言をした。

 今、中国共産党の荒い挑戦の前で、世界最強の同盟国を持っている韓国は、少なからぬ韓国人たちが韓国がまるで孤児のようになるかも知れないという不安感を持っている。

 米国は去る7月6日、大統領命令で金正恩を人権犯罪者と規定した。事実上のレジーム・チェンジ宣言だが、米国務省の判断根拠は2015年度の国連総会の決議だった。米政府はまた、「対北情報戦拡大」も推進する態勢だ。北韓の核武装を阻止、解体する方法が、一部で提起されている武力による核能力の除去かレジームチェンジだけである現実で、オバマ政府が決定した人権と情報を利用した圧迫措置は正しい選択と言える。

 人権犯罪者としての規定は大統領が変わっても簡単に変えられない事案だが、米国の政策を韓国が決めるなどできはないから、韓国も国家的に金正恩体制のレジーム・チェンジを追求せねばならない。そして金正恩体制のレジームチェンジが不可能な状況に備えるためにも、直ちに独自の核抑止力の確保を準備しなければならない。韓国の核抑止力は敵の脅威、攻撃するためではなく、ソウルが広島や長崎のようにならないためだ。地球上に核兵器が出現してから、相手の核攻撃を抑止する唯一の方法、手段は核兵器だけだった。

 日本は、金正日・金正恩体制を利用して憲法解釈の変更を通じて普通国家化、すなわち軍事力整備と集団的自衛権の行事が可能になり、憲法改正も視野に入ってきた。日本の正常国家化という悲願を成すようにしてくれたのは平壌の暴圧体制だ。

 もう韓国も分断71年間に支払った高価な犠牲の代価を得るときだ。北韓の核武装と中国の北韓核庇護は、韓国にこれ以上我慢したり待ってはならないという決断を強いている。大韓民国の生存のための選択は、奴隷状態の北韓住民の解放という文明史の方向とも合致する。韓国はポピュリズムの福祉政策を止揚し、真の平和と福祉、つまり北韓住民解放という国家目標に予算を集中しなければならない。とうど同盟国の米国も韓国の自助努力を求めている。国防費を画期的に増やし、韓国も中国の戦略的弱点を突く非対称戦略を駆使せねばならない。

 北側が核弾頭爆発実験までおこなった状況で、韓国が取れる代案は独自の核抑止力を持つしかない。結論的に言えば、韓国の核武装を強要したのは北韓と中国だ。韓国が独自の核抑止力を建設すれば、中国の戦略的攻勢は壁にぶつかるかも知れない。中国の脅威下にある東アジアの他の国々も似たような動きを見せることになるからだ。

 韓国と日本両国は8月27日、ソウルで開催された両国の財務相会談で「通貨スワップ協定」を再締結することに合意した。早い時期に軍事情報の秘密保護協定も締結しなければならない。そして、日本が韓国の友邦なら、自由世界の敵である朝鮮労働党の在日党である朝総連を解体させることで韓国当局と協力しなければならない。

 自由は決してだだでない。自由を護る唯一の方法は自由を拡大、拡散することだ。(2016年9月24日)

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