‘革命検察’に変わった‘特検’の刃が私の首を斬る前に解体せねばならない。違法・違憲で任命された朴英洙特検を解任せねばならない。

                                        金平祐(元大韓弁護士協会会長)

 このような人が特検の刀を握ったため本当に国が心配だ。いや、もっと根本的にはこんな非常識の特検の無理な請求に対して判事が拘束令状を発するのがもっと大きな問題だ。

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 朴英洙特別検事に対する懸念が噴出している。先週は朴英洙特検が韓国を代表する企業、サムスン電子の李在鎔副会長を贈賄の疑いで拘束するという記事が国内外に報道された。朴英洙は大検中央捜査部長のときSKグループの崔泰源会長と現代自動車グループの鄭夢九会長を拘束したが今回、特別検事として三星グループの李在鎔副会長を拘束すれば、韓国の3大グループ会長を全部拘束する、それこそグループ会長キラーになるところだった。

 米国など先進国では基本的人権として認められている保釈制度が韓国にはない。(韓国では事実上、病気の保釈のみが認められ、保釈金を出して釈放された本当の保釈ほとんど許されない)。そのため、韓国での拘束は検事が被疑者を最初20日間はいつでも勝手に呼んで尋問でき、企業のすべての帳簿を押収して企業活動を麻痺させられる恐ろしい刑罰だ。企業の会長、社長、役員たちは一旦拘束されれば裁判が終わるまで数ヶ月間、拘置所で青い囚人服を着て電話もできず家族にも会えない。(特別面会という狭い門を通らねならない)完全な刑務所生活だ。

 有罪判決が出るまでは無罪と推定するという憲法の人権精神はどこにもない。一方、米国などの先進国では保釈を基本的人権として認識している。被疑者、つまり犯罪容疑者を拘束する際は、必ず一定額を現金か証書で納めれば釈放されるという保釈条件付きだ。被疑者が別に保釈を申請する必要もない。それで、刑事被疑者でも有罪判決が下される前に拘束される人はほとんどいない。

 ただ、保釈期間中は旅行が制限され裁判には出席するという義務があるだけだ。結局、拘束自体はたいしたことでない。大きなニュースにならない。残念ながら韓国ではこのような捜査段階での保釈制度がない。刑事訴訟法の保釈規定は検事の捜査が完了した後、つまり起訴された後、被疑者が別途に申請する保釈だが、実際には病保釈の外は許可されることが非常に少ない。被告人が犯行を自白した場合を除けば許可は期待できない。

 結局、韓国では拘束それ自体が恐ろしい刑罰であるため、企業家たちが特別捜査部(略称特殊部)、中央捜査部(略称中捜部)、特別検事(略称特検)に捕まっては拘束されれば、その企業はもはや潰れたと一般の人々が考え取引を遠慮するため正常な企業も本当に潰れる。だから拘束された人々は検事が望む答えをはい、はいと無条件答えるしかない。

 拘束が自白(虚偽の自白である可能性が高い。強要された陳述であるため真実とは距離があると見るしかない)を生み、自白が有罪を作る韓国の原始的な捜査と裁判の構造がここから生まれる。韓国の法治主義がまともに機能しない根本的な原因がまさに保釈制度の不備から来るものだ。

 いずれにせよ、拘束された当事者たちはもはや私の人生は終わったと思う。それで、少なからぬ企業家たちが逮捕される前に自殺した。どんなにせっぱつまれば、現代グループ会長の鄭夢憲氏、甚だしくは大統領まで務めた盧武鉉氏が自殺しただろうか(もし、外国のように保釈を基本的人権として憲法に規定したらそういう不幸なことがなかったはずだ)。

 このような歴史的背景のために中央捜査部はなくなった。なのに、特検はまだ残っている。今は特検が従来の特殊部・中捜部がやったことを全部やる。名前が変わっただけで行動は全く同じだ。今まで朴英洙特検がやった行動を見ると尋常でない。

 まず、捜査の範囲が問題だ。元々朴英洙特検は崔順実事件を調査するため作った。ところが、いわゆるブラックリストと言い文化体育部の業務文書を調査してこれが憲法上の言論の自由を侵害したという理由で高位職の公務員たちを拘束した。筆者がいくら朴英洙特検法を見ても特検の調査対象にはない項目だ。それでも令状が発された。

 担当の判事は果たして朴英洙特検の調査対象を確認したのか疑問を感じる。仮に調査対象に入ると仮定しても、調査対象なら無条件犯罪であるということではない。ブラックリストであれレッドリストであれ、公務員が業務上の必要でリストを作るのは正当な業務で、それ自体が違法、違憲になるわけではない。警察や検察もいわゆる捜査対象者、観察対象者などのリストを作って常時チェックしている。では、そういうリストも憲法上の人権侵害だから犯罪になるべきではないか。自分達がやることは合法で、他の省庁の業務リストは違法、犯罪とは言えないのではないか。理解できない。

 そもそも、犯罪になるためには罪刑法定主義の原則上、実定法に処罰規定が必要だ。公務員はブラックリストを作るな、作れば処罰するという刑事処罰の法律が大韓民国法典のどこにもない。したがって、警察や検察も捜査対象、要観察対象者の名簿を作るのではないか。憲法上、言論の自由を侵害した犯罪という罪もない。憲法の言論の自由の原則に違反したら憲法訴訟、行政訴訟を起こして憲法違反かどうかを憲法裁判所が判決すべきで、特検が憲法違反までを判決して憲法違反として人を拘束し、憲法違反の罪で起訴すべきではない。

 刑法の本の最初の章に罪刑法定主義が出る。罪と罰は法律で定めるという非常に基本的な憲法原則、刑事法の原則だ。しかし、朴英洙特別検事はこの基本原則を無視しているのではないか。このような人が特検の刀を握ったため本当に国が心配だ。いや、もっと根本的にはこんな非常識の特検の無理な請求に対して判事が拘束令状を発するのがもっと大きな問題だ。

 こうなれば、朴英洙特検の言葉が大韓民国の法ということになる。それだけでない。朴英洙特検がインターポールに、鄭ユラという女子をテロリスト級の重罪罪人リストに入れて逮捕を依頼したという。母親の崔順実を自白させるため逮捕するというから、こうは日帝時代に特務警察や憲兵が韓国の独立運動家たちを捕まえて自白させるために使った手法と何が違うか!

 今日は三星グループが、明日はどこの大企業が対象になるか誰も知らない。ミール財団、Kスポーツ財団に出捐したすべての大企業の総帥たちがいつ逮捕されるか分からず外国出張もできず震えているという。これらの大企業と関連のある数百、数千の中小企業も皆がいつ火の粉が自分たちに降りて拘束され、税務調査を受けるかと超緊張状態になるのは当然だ。

 文化界、行政府、企業、このように国中が恐怖の中で震えている。果たしてこれが特検の任務で使命なのか元々特検はこのように国中を恐怖に追い込むため作った制度でない。

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 元々特検制度は米国で権力型不正を権力から独立した捜査官が調査する慣習法(common law)上の捜査制度だったが、1972年ウォーターゲート事件のときニクソン大統領および彼のホワイトハウスの参謀たちがウォーターゲート侵入事件の縮小、隠蔽に関連したという疑惑を受けるや、関連がないという大統領とその側近たちの言葉を信じて、連邦政府の法務部長官が疑惑を解消させる目的で検事を経歴のあるハーバード大学法学部教授(Archibald Cox)を独立検事(Independent Prosecutor)として任命して調査させたのが始まりだ。ところで、この独立検事がホワイトハウスの業務録音テープを調査しようとしらニクソン大統領がコックス独立検事を解任したため、大統領と議会の間で本格的な権力闘争が展開され、それがついに議会の弾劾試図と大統領の辞職につながったのだ。その後、米国連邦議会は慣習法上の独立検事制を参考して、政府倫理法(The Ethics in Government Act)第6章に独立検事(Independent Counsel Law)を制定するに至った。

 だが、米国のこの独立検事制度については米国内で批判が多い。一番の問題は実効性だ。短い時間に制限された人力で権力型の不正を調査することは決して容易でない。ほとんどの独立検事たちが国家予算だけを浪費し成果を上げられなかった。

 米国で何かの新たな制度ができたら直ぐ輸入して実験するのが韓国の癖だ(そうしながら、いざ米国の民主主義の基礎である法治主義はまったく学ばない。根は学ばず最新のブランド、外見だけが好きなようだ)。

 韓国では1999年、金大中大政権のとき俗称‘検察総長夫人への服ロビー事件’の際、初めて特別検事制を導入した以来、2016年の崔順実ゲートに対する朴英洙特検に至るまで17年間、合計12回の特検があった。おそらく世界で最も特検の運用率が高い国だ。だが、事後の評価は低い。成果があったのは2回だけだ。残りは疑いを発見できず疑惑だけを残した。甚だしくは、特検が起訴した事件が法院で無罪となった事例もある。そのため特検無用論が出る。

 そもそも権力型不正は捜査が容易でない。香港やシンガポールの例を見ると、権力構造と権力不正に対して長年の捜査経験を持つ捜査要員たちがおり、その要員たちが数年、何十年の情報、つまりノウハウを蓄積してこそ成果が出る。権力型不正に関する専門知識もなく、清廉だとか、中立的だとかの名分で突然任命されて数ヶ月程度捜査することでは成果が出られない。

 ところで、実際に警戒すべきことは、特検の成果がないということではい。むしろ、朴英洙特検のように、自分の捜査経験を信じ、短い時間で成果を出そうと無理をするとき生じる権力乱用だ。特検が過剰捜査であちこと、むやみにまず拘束して虚偽の自白を引き出し始めれば、大変なことになる。被疑者を拘束して自白させることはさほど難しいことと言えない。朝鮮時代の管理もやったし、アフリカや南米のような国でも全部やる。

 韓国警察もいくらでもできる。そう捜査するならあえて特検を作って巨額の予算を浪費する必要がない。本当に捜査技術、実力があると言えるためには被疑者を拘束せず、つまり、外国のように被疑者が保釈で釈放されて弁護人を同行して検察と対等な自由な状態で証拠を見つけ、その証拠を持って法院で有罪判決を引き出してこと本当に実力のある特別検事だ。

 だが、今朴英洙特検は独立検事本来の趣旨から外れて全能の捜査権力を行使する、まるで革命検察のように振舞う。根本的な問題は、朴英洙特検の出発、そのものが適法でないところにあると思う。

 今回の朴英洙特検は2016年11月22日、国会が作った法律によって90日間の時限で(延長は可能)崔順実事件の15個の疑惑事件を調査するため設立された臨時の捜査機構だ。しかし、この法律は特検の任命手続について最初から異常に始まった。元々特検は国会が任命権を行使するか、それとも、国会が大法院長や大統領に任命権を委任するのが慣例だ。しかし、この法律は国会ではなく、国会の「共に民主党」と「国民の党」の二つの野党が推薦権を行使することになっている。大統領はこの二つの野党の推薦を受けて任命権を行使するよう法律で規定した。三権分立の原則上、大統領に推薦権を行使する憲法機関は国会となるべきで、国会の内部機関に過ぎない政党が直接、大統領に推薦権を行使するのはそれ自体が違憲だ。これはまるで大法院長ではなく大法院長の秘書室長が大統領に法官を推薦するも同然だ。

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 大統領に対する欠礼も甚だしい。これは大統領に対する侮辱だ。それだけではない。野党だけが推薦すれば野党の特検であってどうして権力から独立した中立的特検になれるか。そういう点から朴英洙特検はその任命の手続きから憲法に違反し、特検法の精神に反する違法・違憲の特検だ。

 筆者が見るには、朴英洙特検が今のように‘革命検察’のようにおかしく行動するのは、その出発自体が拙速でまったく野党の政治的目的からできたためだと思う。今、この国は非正常だ。法治主義が故障した。国会が三権分立の原則を無視して大統領の権限を簒奪している。憲法と特検法の精神に反する違法特検が革命検察のように国中をむやみに捜査し勝手に拘束する。法院は、検の剣幕に押されて(?)罪刑法定主義の基本原理も守らない特検の令状請求に目を閉じて令状を発する。

 朴英洙特検が朝鮮総督のように国民の上に君臨して全国民を恐怖に追い込んでいる。朴英洙特検のこの横暴を国民たちが止めなければ、断言するがこの国は1960年代の中国の文化革命のように恐怖の無法地帯になる。このような恐怖状況では憲法裁判所の弾劾裁判も正常にできない。朴槿恵大統領一人の危機ではない。われわれ皆の安全と財産が危うい。

 米国独立戦争のときベンジャミン・フランクリンの有名な言葉がある。“われわれ皆が一緒に絞首刑にされないと、間違いなく皆が一人ずつ絞首される”(We must hang all together or most assuredly we will hang separately。)

 恐怖と戦うためには団結せねばならない。散らばれば恐怖によって一人ずつやられる。‘革命検察’に変わった‘特検’の刃が私の首を斬る前に解体せねばならない。違法・違憲で任命された朴英洙特検を解任せねばならない。(2017年1月18日)

www.chogabje.com 2017-01-24 13:00

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