悲しいクリスマス

                                  

<その①>

今日、俺に子供が生まれた。女の子だ。
外は寒くてあらゆる物を凍らせてる。
ここで俺は根をおろす。
俺はもう独りぼっちではないのだ。
こんな寒い夜、故郷の町は
灯した明かりまで凍りつく寒さだ。


今、戦争は終わって世の中は平和が訪れようとしてる。
この平和は何時まで続くのだろうか。

俺は17歳で故郷を離れた。
俺は戦争を望んではない。
だけど、世の中は俺の意思とは関係なく、
全ての人を巻き込んでいた。狂ったように・・・・
その時俺は自分の納得の出来ないその状況から逃げたかった。

たった一週間の訓練で
俺には恐ろしくも人を殺せる許可が与えられた。
本当に俺は人が殺せるのか。

戦場に向かう群れの列は百メーターを超えるくらいで
何人か同じ学級の友人もその群れにいて
その中の何人かは俺に手を振った。
寒い冬の日差しは有り難い物だ。

山道は険しく、太陽はもう隠れようとしている。
今晩は多分この辺で野営だろう。
寒い冬の日没は悲しいものであった。


どのくらい寝ていたのか寒さと膀胱の圧迫感に目が覚めた。
この行軍はもう一週間も続いてる。
みんな疲れ果てて、寒さにもめげず死んだように眠ってる。
このように寝られるのも後、幾晩だろうか
後2,3日で戦線に着くのは誰もかが予測していた。


用を出すため野営地から離れた。
圧迫されていた膀胱が元に戻る快感を感じながら
体を振るって一瞬空を見上げると、
山々に隠れて狭くなった空に月もなく星が見えた。

雪が止んだ空は綺麗。とても綺麗。
人間は戦って死んでいくのに、星は変わらなく今夜も出ていたのだ。
瞬間、星は涙を流していた。


母さん・・・ それは母さんの涙の様だ。



 

2008/05/28 16:57 2008/05/28 16:57
この記事にはトラックバックの転送ができません。
YOUR COMMENT IS THE CRITICAL SUCCESS FACTOR FOR THE QUALITY OF BLOG POST