北朝鮮が30年ぶりに一新した朝鮮労働党指導部の顔ぶれを見ると、分野ごとに北朝鮮を率いる「金正恩(キム・ジョンウン)の男たち」の姿が浮かび上がってくる。韓国統一部の関係者は1日、「金正日(キム・ジョンイル)時代を象徴する『元老』も多いが、新たに金正恩時代を代表する人物が随所に配置されている」と語った。
(1)経済:洪錫亨(ホン・ヒョンソク)党計画財政部長(74)=デノミネーションの失敗で銃殺された朴南基(パク・ナムギ)氏の後任=や、太鍾守(テ・ジョンス)党総務部長(74)らは経済通とされ、党書記にもそろって選出された。
洪錫亨氏は義賊小説『林巨正(イム・コッチョン)』を書いた洪命憙(ホン・ミョンヒ)の孫で、金策製鉄所の責任書記や国家計画委員長などを務めた。また、太鍾守氏も経済担当副首相を務めた。
だが、「二人は改革・開放とはかけ離れている」という見方がある。改革寄りの人物は中核的な党職である政治局員とその候補計32人はもちろん、党中央委員124人にも含まれていない。「開放派」で知られる朴奉珠(パク・ポンジュ)前内閣首相と、その側近の金英虎(キム・ヨンホ)前内閣事務局長が、党中央委員会候補委員105人にかろうじて名を連ねている程度だ。
(2)対外:対南(対韓国)は金養建(キム・ヤンゴン)氏(68)、対米は姜錫柱(カン・ソクチュ)氏(71)が担当する。党統一戦線部長だった金養建氏は今回、党対南書記を兼任することになり、このほど内閣副首相に昇進した姜錫柱氏は政治局員に任命された。
対南軍事工作は、韓国海軍哨戒艦「天安」沈没事件の「主犯」とされる金英哲(キム・ヨンチョル)偵察総局長(上将)が引き続き担当するものと思われる。金英哲氏は党中央軍事委員会の委員(副委員長は金正恩氏)に任命された。
(3)公安:禹東則(ウ・ドンチュク)国家安全保衛部(スパイ監視・摘発担当機関)第1副部長(68)は中央軍事委員会委員と政治局員候補に、朱相成(チュ・サンソン)人民保安部長(警察長官に相当、77)は政治局員に昇進した。
これらの統制・監督は、金正恩氏の叔父に当たる張成沢(チャン・ソンテク)党行政部長(64)が担当する。「張成沢・禹東則・朱相成の3氏で金正恩体制を守る『トロイカ』になるだろう」(北朝鮮に詳しい消息筋)との見方がある。
(4)軍・党:軍は代表者会直後に行われた記念撮影の際、金正日総書記・金正恩氏親子の間に座っていた李英鎬(リ・ヨンホ)総参謀長兼政治局常務委員(次帥、68)が中心となる。李英鎬氏を筆頭に、崔富日(チェ・ブイル)副総参謀長ら実質的な武力勢力を指揮する総参謀部メンバーが多数昇進、あるいは中央軍事委員などの要職を占めている。
党では、崔竜海(チェ・リョンヘ)氏(60)が急浮上した。今回の人事で党政治局員候補、党書記、党中央軍事委員という三つの役職を同時に与えられ、代表者会の集合写真でも、金正恩氏のすぐ後ろに立っている。なお、金正恩氏の叔母・金敬姫氏(64)も政治局員に任命された。
