床屋道話 (その17 ダル、ちっちぁいぜ)
ことしもダルヴィッシュや岩隈など、プロ野球の大物たちが米大リーグに移籍した。喜んだり活躍を期待したりしているファンは多いが、小生は嬉しくない。ダルの会見を聞けばそれなりの言い分があるようで、他の移籍組にも個々の事情や思いはあろう。この文章は特定の選手への批判や不満を言うものでなく(題ではダルの名を使わせてもらってしまったが)、しかし一般論としてメジャー熱に反対するものである。
WBCなどで明らかなように、日本の野球が世界一ないしその水準にあることは今日では明らかである。「本場」に行って実力を試したい、という理屈は成り立つまい。いつまでメジャーへの「憧れ」にとらわれているのだろう。「向こう」で活躍すれば「箔がつく」という事大主義を、引きずっているのだろう。まさか金のためだけではあるまいが。
むしろ小生は期待したい。主に日本で活躍することによって(、無論WBCや――残念ながら五輪はなくなったが――他の交流試合で力を見せつけつつも)、他国の選手に、日本に移籍してこいつと戦いたい、と思わせる選手の出現を。外国ファンに、日本に来てその最高の試合を見たい、と思わせようとする気概を。そういうかたちで日本の野球こそ世界一だと誰にも思わせる(実力ではかなりそうだと小生は思うがアメリカ人の大部分は思っていまい)ようにすることこそが、本当に大きな夢ではないか。
他をお手本として「追いつき、追い越し」て「いちばんだ」などというのはもう駄目だ。独自なものの力で、他からも憧れられたり目指されたりするのが、喜ばしいことだ。いくつかの分野では既にある。アキバに行けばメイドカフェめあてに来た外人も多い。そんなもんと顔をしかめる御仁もあろうが(小生はそうばかにしたものではないと考えている)、それをくさす暇があるなら、これこそ価値あると自分が思う分野で、広く高い評価を受ける成果を出すべく努めるがよかろう。
仲島陽一 / 北樹出版 |
仲島陽一 / 東信堂2010/04 ¥2,415 (税込) ポイント: 23 pt 在庫がございます。通常2-3日以内に発送致します。 ただし、在庫が僅少です。品切れの場合お取り寄せとなります。 この商品は、国内送料無料でお届けします。 |