'政治学'に該当される記事2件

  1. 2013/06/10 床屋道話 (その22 「コンパクト・シティ」に反対)
  2. 2010/04/29 新刊紹介

 

床屋道話 (その22 「コンパクト・シティ」に反対)

人間はアリのように積み重なって生活するようにはできていない。
一箇所に集まれば集まるほど、いよいよ人間は堕落する。――ルソー

  

 小生は 毎年『経済財政白書』を読むことにしている。言うまでもなく、毎年の経済状況について政府が整理し分析したものだ。おおむね地味で退屈な本だが、ときに政治家や経済官僚の考えがみえて関心をひかれるときもある。


  昨年(2012=平成24年)のものではコンパクト・シティの提起が気になった。まだ耳慣れないと思うが、そのうちじわじわ、あるいはどっと出される可能性も少なくないと思われる。「限界集落」と呼ばれる、高齢者ばかりになった地域の出現が背景にある。従来の「過疎地」だけでなく、ニュータウンなど、首都圏・通勤圏のあちこちにも生まれつつある。近くの店などがなくなり、また駅まで15分20分だとしても坂が多かったりして車のない年寄りには難儀だ。また行政のほうからの対応にもコストがかかるというのである。そこで『白書』を書くようなお偉え方としては、むしろそうした「集落」はもう見捨て、住民たちは中心街の高層ビルに移してしまうのが人口減のこれからの日本に効率的だ、とお考えのようだ。

  一般国民、特に弱い立場の者をモノ扱いして都合よく集積しようという高慢なそろばん勘定がまずむかつかせるが、冷静に考えてもよいとは思われない。転勤を繰り返すエリートビジネスマンや高級官僚は地域との絆など屁とも思わないのだろうが、まっとうな生活者は住みなれた地域に愛着を持っている。特に高齢になってからの転居が精神的に大きな負担であることは心理学的事実だ。経済官僚の功利主義は本性上不人情だが、コンパクト・シティ論は損得勘定としても「爪で拾って箕でこぼす」ものではあるまいか。

  いまの日本の道はよすぎるほどである。もうけ主義のバス会社が撤退しても、小型のコミュニティ・バスを駅・病院・大型店舗などを回って走らせてうまくいっている自治体もある。(高速道路の高架・トンネル・橋などの補修はこれからの検討課題だが、生活道路の補修にはそれほどの額はいらない。)食料品店などは、昔の「御用聞き」のように、店のほうから車で商品を届けにくればよい。そのときあしたの注文を受けてもいいし、電話・ファックス・インターネットなど、連絡手段のほうも昔よりはるかに発達している。生協では現に行っており、準営利でも目先の利くところでは、一人暮らしや忙しい人向けに、調理した食事を宅配する商売を始めている。「限界集落」では、確かに出前するそば屋・中華屋・すし屋・ピザ屋をそれぞれ一つずつは持てまいが、ある程度多様に宅配できる店を一つ維持することは工夫できるのではあるまいか。また、隣は何をする人ぞのコンクリート・ジャングルで犯罪が多いことは社会学的事実だ。人々が知り合っている町や村よりも、ビル街での防犯対策は費用がかさむ。

  むしろ密集した人々をばらけさせる施策をとるべきである。いまの高齢者は農家出身も多いので、退職後近くに畑を借りて楽しみつつ実益も上げている者も多い。こうした人々の経験も生かして、より若い人々も呼び戻して、都市近郊の農牧業を進め、また里山を守りたい。米でも木材でも確かに輸入のほうが安いかもしれない。しかし田が荒れていないこと、森や林があることで、国土保全にどれだけの利得が生まれているかを、計算から落としていないだろうか。自給率や食の安全の面もあるが、治水や防災の面でも、一次産業の見えない効果は莫大なのである。そして国の最大の富は人なのだが、高層マンションで画像のゲームで遊んだ子と、自然や生き物と触れて育った子とでは、どんな違いが生まれるだろうか。海沿いの再開発で作った高層建築群で風を止め、都心のヒート・アイランド化を加速化して冷房付けにする、そのため電力が欲しくて原発に依存させる、なんとも愚かなエリートたちよ。いや目先の利にはあまりにもさとい、実業家たち・政治家たちよ。

  毎年「反経済白書」を構想するのが、愛国者の務めかもしれない。


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2013/06/10 10:33 2013/06/10 10:33
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新刊紹介

お知らせ 2010/04/29 20:46

ブログ管理者、朴美理よりのお知らせです。

 仲島先生の新刊を紹介いたします。このブログの政治学講義及び思想、思考等にも紹介致しました、先生の執筆を含む、政治学を理解するのに当たってとても分かりやすく解説された一冊です。

 ブログにはまだ載せてない、批判精神が光るお話も沢山あって、政治の事を特別じゃなくて普通に考えさせてくれます。これこそ政治学と言うありきたりの政治学ではなく、今、今日の政治のあり方や、今日に至るまでの過程、その背景にある思想なども分かりやすく例を挙げて書いておりますので是非手にとってお読みください。

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2010/04/29 20:46 2010/04/29 20:46
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