「文ちゃんの浦安残日録」 (Ⅰ―2)
2011年3月2ⅹ日(ⅹ)
福島原発の危機的事態は、依然として予断を許さない状況だ。関係者の必死の苦闘が
不眠不休でつづけられている。東京消防庁の福島第一原発への放水作業を指揮した隊長
らのテレビ会見の画面に、思わずねぎらいの言葉をかけた。
自衛隊・消防・警察など国の機関の隊員・署員は、国民の生命財産を守る重大な役割を担っている。この命がけの危険作業に出動した夫を、健気に励ました妻たちがいた。
その一方で、またあの知事の登場だ。官邸を訪ね、政府関係者の隊長への指示不適切と放水車が壊れたことに抗議したという。“国難”対処の総指揮官として多忙極まりない菅総理に、そんな難癖をつけに行くとは児戯にもひとしい行為である。
報道陣にもアピールしたようだが、来月行われる都知事選を意識したパフォーマンスと見る都民も少なくないだろう。あの“天罰”発言の直後、彼を揶揄する川柳が新聞に掲載された。己の言葉なら、”兵隊“(隊員か?忌まわしい戦時を思い出す)が命をかけてくれるとでも言いたいのだろうか。何様のつもりなのか!
彼には、“愛国心”や“自由”の言葉を振りかざして、アメリカの“良心たち”を蹂躙・抹殺した、あのマッカーシー議員に重なるイメージをぬぐいきれない。
東日本大震災の陰で最近まで報じられなかった浦安の被災を知った学友・元職場仲間・友人・知人から、つぎつぎと見舞いの電話やメールが届くようになった。ありがたい。
481戸のわが住宅団地内の水・ガス供給が、二、三日前から相次いで復活したが、
広い範囲の下水道の復旧見込みは立たず、トイレの“大”以外の生活排水は庭の雨水桝に流すよう指示され、風呂・洗濯は厳禁だ。
断水で高層マンションから避難した娘一家の街区では下水道が使えるので、給水再開でトイレ・風呂・洗濯が可能となり、戻った娘から入浴と洗濯にくるよう言ってきた。
その日、ディズニーリゾートのホテル群が浦安市民に入浴サビースを始めたとの報。早速出掛けて12日ぶりに入浴した。立派な大浴場で手足をのばして湯に浸っていると、天国に湯浴みする心地だったが、寒さのなかで震えている被災地のお年寄り、災害の爪痕と闘っている関係者らに申し訳ないとも想った。
32年同期入社「三二会」の仲間数人から届いた見舞いメールに、仲間の一人K君宅が液状化現象で傾いて困惑しているとあった。訪ねると、ゴルフボールが容易に転がる床の傾斜だ。生活インフラのダウンで不自由している私には、メールを遠慮したと言う。やさしい人柄の彼ならでは。
住友林業に勤める息子に連絡し、修復工事の相談にのる手配を頼む。リフォーム専門の子会社では震災の被害住宅の調査依頼・復旧工事が山積しているそうだ。上屋を建替えず、沈下した基礎だけを作り直す「建屋横引き工法」のスペースがとれるかどうか。費用も決して安くはないというが、建替えるほどに掛かるのなら意味がない。
K君のご近所・市内各所で同種被害が少なくないようだから、新しい工法を考案してはどうか。注文が多ければ、傾斜修復の新機械化システムも十分にペイするだろう。
復興への迅速で経済的な創意工夫が、さなざまな分野で生まれることを期待したい。
それにしても、喫緊の問題は福島原発の危機的状況の沈静化で、関係者の尽力成功を祈るばかり。被災地の日々を報じるテレビ像を、世界の目が見守り、励ましている。