「文ちゃんの浦安残日録」 (Ⅰ- 3)  
                
 

                                                                                                                 2011
32X(X)

 

居住区域には排水規制の不自由があるが、日常生活は、徐々に平常に向かっている。

喜寿残日に、音楽(唄い)/絵画(描き)/文芸(詩文を書く)を楽しんでいる私の予定表は、さまざまな変更を余儀なくされた。

<音楽>では、練習会場の公民館が避難場所に、第10回「浦安男声合唱団定期演奏会」(四月半ば)を開催する市文化会館が防災本部の拠点になったりで、演奏会どころか、これから毎週の練習さえ目途が立たない。今年中の開催は難しいと思われる。昨年暮れの第11回「IKSPIARI第九」がきっかけの「合唱団 LICHIT」の結団式と初回の練習会場も閉鎖され、五月まではムリのようだ。

鑑賞を楽しみにしていたコンサートでは、敬愛する山陽地方出身のソプラノ歌手・

横山恵子さんがプリマの『アイーダ』と、「浦男」常任指揮者の仁階堂 孝先生指揮の

「アンサンブルSZIA 15周年記念コンサート」の中止連絡があった。残念だろうが、被災地の惨状と不自由な避難生活に想いを馳せた苦渋の決断であろう。

 ボランティア仲間と月に一回出前する、高洲地区の特別養護老人ホーム・愛光園への三月十七日の訪問コンサートも、停電と施設の一部損壊で仮移住の破目となって中止。最高百歳の高齢入居者の不安な気持ちとヘルパーさんたちのご苦労を想い、みなさんが好きな懐かしい歌を一緒に唄い、リクエスト曲を聴いてくださる日が、一日も早く来るようにと祈る。

<絵画>では、「日比谷彩友会展」の作品講評と春秋の絵画研究会の講師をお願いしている白日会副会長の深澤孝哉先生に、「白日会展」(新国立美術館・三月十八日)をご案内いただく予定だった。余震を危ぶみ中止に踏み切ったが、案の定、当日は休館となる。

代替に二十日の案内を受けたが、連載『アラブと私』の原稿締切日で参加できなかった。

 また、NHK「新日曜美術館」で中川一政展(日本橋高島屋・最終日三月二十一日)見て出掛けたくなったが、編集長に送信した原稿の訂正が生じて断念する。

 うれしい出会いもあった。銀座教会ギャラリーで一見した個展がすばらしくて記帳してから五年ぶりに、「野島朱美透明水彩展」の案内状が届き、池袋の小さなギャラリーへ最終日の午後、出向いた。国内外の風景が多い水彩作品の数々を久しぶりに拝見すると、四季折々の色彩のみならず空気までも見事に捉えた透明感溢れる画面に感銘した。

 自己紹介のよすがに持参した『文ちゃんの旅と暮らしの絵・ポストカード集』を見てもらい親しくお話しすると、自然の感じ方や描くときの心得えなどが驚くほど似ていて意気投合した。うれしい出会いを互いに歓び合った、大震災後初の至福の時間だった。

<文芸>では、地震勃発で執筆が遅れた今回の『アラブと私』は締切りに間に合った。

 前々回は、約五十年前のイラク軍事革命と共和国成立の執筆中チュニジア政変が勃発。前回、それに触発されて中東・北アフリカ諸国に波及しはじめた反体制勢力の市民民主革命をめざす巨きなうねりを書き、今回は、さらに道草的な記述をつづけている最中の東北関東大地震だった。40年前の体験に基づく創作ノンフィクションだが、歴史的ともいえる事件や災害をリアルタイムで記述しておきたい衝動は、抑えきれないものだ。

 ふと思い立ち、この『文ちゃんの浦安残日録』を書き始めた。高校時代に文芸部や

新聞部を創設したときの“初心”が、喜寿老人に蘇ってきたのかもしれない。



 

添付画像

泥に沈んで傾いてしまった浦安市富岡交番






2011/03/30 14:14 2011/03/30 14:14
この記事にはトラックバックの転送ができません。
YOUR COMMENT IS THE CRITICAL SUCCESS FACTOR FOR THE QUALITY OF BLOG POST