文ちゃんがツブヤク!              

                 2015年14日(金)

「安保法制」反対の高まり

                           

「安保法制」反対の高まりが、日本各地に広がっている。

 東京・日比谷公園、大阪・梅田駅前の集会でのアピールや映像が、テレビ・新聞で報じられ、国会の煮え切らない論議に業を煮やしたのか、ノーベル賞受賞者を交えた学者・有識者150余人の声明も出された。

 東京の集会に顔をみせた瀬戸内寂聴さんの「安保法制」を危惧する真剣な訴えに共感し、梅田での女子学生のアピールがインターネットですごい勢いでシェアされ、集会当日にアップされた短い主張再生が4日間で10万回を超えたのを見て、「戦争を知らない世代」がこの法制の危うさを感じ取っているのを知った。

梅田駅での女子学生は、「国民の過半数が反対する《安保法制》関連法案を数を恃みに押し切ったことに腹を立てて集会に来て、大阪駅がこんな人にうめ尽くされているのを見るの初めてです」と切り出し、安倍首相がインターネット番組の中で珍妙に述べた「ケンカが強くていつも自分を守ってくれる友達の麻生君がいきなり不良に殴りかけられた時には一緒に反撃するのは、当たり前ですよね」に対し、「この例をとるのなら、「友達が殴りかけられたからと一緒に不良に反撃をすれば、不良はもっと多くの仲間をつれて攻撃してくるでしょう。そして暴力の連鎖が生まれ、不必要に周りを巻き込み、関係のない人まで命をおとすことになります」、「テロの脅威が高まっているのはほんとうですが、彼らは生まれつきのテロリストだったわけではありません。なぜ彼らがテロリストになってしまったのかその原因と責任は国際社会にもあります。9.11で3千人の命が奪われたからといって、アメリカは正義の名のもとに130万人もの人の命を奪いました。残酷なのはテロリストだけではありません」などを述べていた。

 「安保法制」の賛否を問う世論調査では、賛成の約3倍の反対回答が報じられているが、麻生副総理は「60年・70年安保の時の反対運動に比べれば、たいしたことはない」と嘯き、麻生派2年生議員は、「インターネットで反対運動をする学生団体は利己的な人間らで、こんな若者をつくった憲法の基本的人権の理念が問題だ」とする主旨をインターネットで開陳。麻生氏は「(法制が)国会を通ったあとにすればよかった」と言い、一応、暴言を嗜めるポーズだけはとった。

 自民党の会合で磯崎首相補佐官が「安保法制の法的安定性は問題ではない」と述べる前に、国会に呼ばれた憲法学者(自民党招致の人も)全員が「憲法上、集団的自衛権は認められない」陳述したのを無視した安倍首相は、野党の磯崎補佐官辞任・罷免の要求に対して、電話の口頭注意にとどめた。

 第2次安倍内閣を成立させた衆院選挙での自民党は、「経済最優先」を掲げて総投票数の20数%ほどで過半数を制した。

 公明党との連立維持で絶対多数(数の論理)を手にした安倍首相は、傲慢さをあらわに、選挙で重要な論点にしなかった「安保最優先」の道を爆走し、小選挙区の自民党候補者の指名権を握る安倍総裁の意を汲む閣僚・議員には、憲法・国会軽視の言動が相次いでいる。

中谷防衛大臣の「核ミサイルも弾薬だから、法的には運搬できる」などは、子供でも言わないオソマツさ。こんな自民党は、小泉純一郎元首相によらずとも、もう壊れているのではないか。党内リべラルの若手と目された谷垣禎一幹事長の存在感も、無に等しい。

 戦後70年の今年8月15日を目前に、敗戦前後の日本を顧みる報道番組が目白押しの中で、国民学校五年で聴いた「玉音放送」が繰り返し流れている。

疎開した村の喧しいクマゼミの鳴声の中で聴いた天皇の声は、擦れてくぐもり、よく聞き取れなかったが、午後の役場からの知らせで敗戦と分った。

 3、4年早く生まれていれば幼年学校か予科練を志願したであろう少年は、真青な空を見上げ、疎開前の広島(原爆をのがれた)で体験した軍人や国防婦人会幹部の居丈高で高飛車な言動を思い出しながら、心底ホッとしたものだ。

 安倍首相のとりまき連中に帝国憲法や教育勅語の理念への回帰を目論む者もいるようで、安倍首相が米国上下院スピーチで明言した「安保法制」成立が実現すれば、あとは一瀉千里で、戦後レジームの見直しに突っ走るのだろうか。

 だが忘れてならないのは、昭和21年制定当時、日本国憲法を占領軍から押し付けられた屈辱的なものとした国民は決して多くはなく、サンフランシスコ講和条約に調印した吉田茂元首相は、日本再軍備を執拗に迫るダレス元国務長官の要請をキッパリと断わって、明治維新以来の「強兵富国」から転換した「強兵ぬき富国」の産業復興政策を、腹心の池田勇人元首相と共にめざしたのである。

わがふるさと福山の宮沢喜一氏(大蔵官僚・国会議員として対米交渉に関わったリベラルの1人)は、吉田茂の本音を「(日本の防衛は)当分アメリカにやらせておけ。憲法で軍備を禁じているのは誠に天与の幸で、アメリカから文句が出ればちゃんとした理由になる」と自著に記した。

 その路線を継承した歴代保守政権が戦後政治体制(レジーム)であり、国民の血と汗の努力を得て、世界第2位(現在3位)の経済大国を実現したのだ。

「清濁併せ呑む」のが政治の世界だが、吉田茂一人で責任を取る意志でサインした日米安保条約は、日本防衛の義務がないまま米軍基地を存続させ、米国の思惑どおり、朝鮮・ベトナム戦争での爆撃機の発進基地となった。

朝鮮戦争特需で軍服から弾薬までを米軍に売って産業復興の足台にした日本企業の経済界には、軍需による経済成長を画策した重工業界の一部による「重武装路線」が持ち上がったが、吉田茂内閣は、保安隊(のちの自衛隊)の発足で米国と妥協しつつ、「重武装」からの距離をとり続けた。

 在日米軍基地問題では、米国からの沖縄返還を成し遂げた佐藤栄作内閣の日米交渉が、現在の基地問題や日米関係へとつながる歴史的転換点となった。

NHKスペシャル(2015年5月9日)『総理秘書官が見た沖縄返還 発掘資料が語る内幕』に、「非核三原則」を打ち出した(1967年)佐藤栄作首相の「核抜き本土並み返還」(沖縄の人々は日本復帰で基地が本土並みに縮小されると期待した)の交渉での「密約」(有事の場合は沖縄への核持ち込みを日本が事実上認める)の存在も述べられている。

 沖縄返還(1971年)から3年後、佐藤栄作氏(安倍首相の叔父)は「非核三原則」の提唱者として、1974年度ノーベル平和賞を受賞した。

 こうした日本の戦後史を知らないほど、安倍首相のチルドレン議員たちは不勉強で無知なのだろうか。また、沈黙している自民党の元老・引退政治家らは、「強兵富国」時代への回帰を画策する右傾化をどんな想いで見ているのか。

 ところで、猛暑日が続く今夏の電力使用量ピークが発電能力の95%に至らない現状での川内原発の再稼働、沖縄米軍基地の移設問題、米国の新たなグローバル戦略のTPP問題等、わが国の将来にとって重大な結果を生む事案への国民の懸念に、十分な説明責任を果たさずに強行突破しようとする安倍首相は、ワンマン的な様相を見せはじめたと思えてならない。

 新憲法の議会制民主主義下、国会・国民抜きで講和条約締結を画策した吉田元首相には、灰燼に帰した日本の戦後復興を実現する明確な展望と実現する胆力が見られたが、「安保法制」ほかの事案をめぐる安倍首相・閣僚には、野党追及や世論調査結果に右往左往する矛盾だらけの答弁が目立ち、国民の懸念と危惧は深まるばかりである。

 数を恃んだ公明党との連立で「安保法制」を強行成立させれば安倍首相のメンツは立ち、米国軍関係者や共和党筋からは大いに喜ばれるであろうが、現政権が目指す日本の将来像は、一向に見えてこない。

 間もなく閣議決定される「戦後70年首相談話」の文言がどのようなモノとなるのか、世界の国々が注目している。

安倍首相が祖父岸信介氏の名誉挽回にこだわり、祖父らの侵略戦争への「おわび」を曖昧にするなら、中・韓・東南アジアのみならず米国・EU諸国の人々は、安倍政権の右傾化を危惧し、新憲法の「不戦の平和主義」を圧倒的に支持した日本国民の変質ぶりに疑念をいだくことになるだろう。

 本来、国民が希求する暮らしの実現と国家の将来のあるべき姿を構想するのが政治家の役割りだが、党利党略や個人的野心で保身に汲々としているサマは、「国民みんさんの命と暮らしの安全を守る」とのお題目とウラハラに、「守れない」状況をつくる方向につき進んでいるとしか見えないのである。

 毎年のこの時期にテレビで放映される映画『黒い雨』『火垂るの墓』や『永遠の0』などを見たが、どんな理由があっても「人のいのちを奪う戦争」を決して繰り返してはならないとの想いが胸をふさぐ。

最近の女性誌で、原発事故後からの「子供を守りたい」という読者変化に応じたテーマの記事掲載が顕著だという。早くから「安保法制」特集をしてきた「女性自身」の主な読者は4050代女性で、瀬戸内寂聴さんと吉永小百合さんの誌上対談が、戦争や安倍政権への危惧を語って、大きな反響を呼んだとされる。

 自民党内に「女性週刊誌対策」の必要を言う声があるそうだが、あの「沖縄二紙」への恫喝の再演は、願い下げにしたい。     
    
  (了・8月12日)



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2015/08/14 16:06 2015/08/14 16:06
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