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華やぎⅡ・聖なる建築』
 
 エコ・ポイントが付いて、地デジが見られる大型の薄型テレビに替えた。
NHKハイビジョンの画像も美しく、ある日、アルプスの山塊の屹立を観て、ふと、30年前に訪れたサグラダ・ファミリア大聖堂を想い出した。
“建築の詩人”アントニオ・ガウディが、1883年から43年の半生をかけた作品は、スペインが誇る世界遺産であり、バルセロナのシンボル。
 1926年の没後に中断された工事は、1940年、弟子たちに託された石膏模型を手がかりに建設を再開して、今日に至る。
 ガウディは、キリストの「生誕」「受難」「栄光」三箇所のファサードに配した12本の鐘楼や170米の中央塔など計18本の塔を構想したが、信者からの寄付と教会拝観料だけの資金で進む建設工事は、構想の一部を変更しながらも、あと100年以上かかるとされる。
「この作品の主人(神)が急いでいないから建設はゆっくり」とガウディは語ったそうだ。ゴシックの大聖堂に、3、400年かけて完成したものがあるのを念頭においていたかもしれない。「生誕」の塔の300段の螺旋階段を登った興奮の極みで、そのとき地震がきて塔といっしょに地上に倒れ落ちてもいいとさえ想った記憶は鮮明だ。無数の部材に加工し、精緻な彫刻を施した石材が、アルプス山塊からのものでないとしても、天をめざして営々と積上げてきた人間の信仰と情熱への驚嘆を呼び覚まして、この拙画を描かせたハイビジョン映像だった。「スペイン絶景30」の中でも、アルハンブラ宮殿についで2位だった。
 彫刻制作の現場詰所でお会いした若い日本人彫刻家は、いまもその部門の責任者で、日比谷彩友会の展覧会・研究会の作品講評をお願いしている深澤孝哉先生の友人だと聞き、建築家としてもご縁の深さを感じた。
 ベネチア、フィレンチェなどを経てバルセロナを訪ねたのは、ガウディの諸作品(実業家グエルが依頼した邸、公園など)とピカソの「ゲルニカ」のためだが、残念至極にも、ピカソ美術館が改装工事中で観れなかった。
 この画は、山塊の石材から大聖堂を誕生させた建築家たちの偉大な仕事へのオマージュとして描いたが、筆を運びながら、バルセロナの居酒屋のカウンターで、皿に盛られた“おばんざい”のようなつまみを肴にビールを飲んだ、至福の夕暮れを想い出していた。


 
 
 
2009/08/29 16:17 2009/08/29 16:17
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