秋めいてまいりましたが、いかがお過ごしでしょうか。
 敗戦前年、広島から疎開して被爆をまぬがれた私は後期高齢者とやらの仲間入りをし、比治山下の小学校で死んだ級友たちがもてなかった時間を生きてきました。  詩心の湧きて筆とる秋の夜ふみを政権交代で高齢者も大事にする社会が実現し、“ヤリクリ自適”の年金暮らしで、唄い、描き、詩・文を書くことを楽しみながら、天寿を全うできるようにと願っています。
 その中で、浦安男声合唱団第9回定期演奏会のご案内をさせていただきます。 
一昨年の第8回も、多数のご来場のお陰で盛況裡に幕を閉じ感謝しています。
 拙詩の『みんなの歌』(浦安市合唱連盟20周年記念歌)と、『星に願いを』の短い初ソロも聴いていただき、とても幸せでした。
 いつもながらの演奏曲目のご紹介です。

<第1ステージ> 「無伴奏男声合唱曲 新実徳英作品より」
詩人で思想運動家だった谷川雁が、新実徳英の曲作品に詩を付けた“曲先”の歌曲集から選んだ7曲です。
歌詞をご覧になれば、激しさと繊細さを併せもつ谷川雁の、時代をみつめる鋭くも優しい想いが心に響いてくるでしょう。旧来の男声合唱愛唱歌の定番に際立つダイナミックな曲想に、叙情性豊かな旋律を唄いあげる新実徳英の曲の数々が加わったことは、私たちの大いなる幸せです。
『南海譜』や『壁きえた』には戦争の悲惨と平和の喜びが詠みこまれています。 
『われもこう』『卒業』の歌唱には、叙情に溺れない自制が求められますが、
私のとても好きな歌曲です。
 雁の兄で在野の民俗学者・歌人の谷川健一は、短歌同人「層」の会員のとき知己を得えましたが、『南海譜』の詩心には、南の島々を旅した健一の“時空”に通低するものを感じます。

<第2ステージ> 「ボーン・ウイリアムズの男声合唱曲より」
 イギリスの作曲家:レイフ・ボーン・ウイリアムス(1872-1958)の作品には、「田園交響曲」などの、イギリスの田園風景を彷彿とさせる牧歌的な作品が多くあります。
 彼は、人びとの暮らしを唄い込んだ民謡の音楽的魅力にひかれて、イギリス各地の民謡を採譜し、伝統音楽の継承とその評価を高めることに貢献しました。
 前回のイギリス古詩の翻訳につづいて今回も、訳詩にかかわらせていただきましたが、詩を書く人間の一人として、自分の詩に曲がつけられ、歌い継がれるのは、まさに至福というほかありません。
 すべての演奏曲目の詩と訳文がプログラムに掲載されていますので、演奏前にお目通しくださると、詩心をより深く感じとっていただけるかと存じます。
 みなさんが親しまれてきたイギリス民謡に、新たな数曲が加わるでしょう。

<第3ステージ> 「フランス詩による男声合唱曲集 月下の一群(1)」
 わが国の代表的詩人・フランス文学者:堀口大学(1892-1981)は20歳の頃からフランス近代詩を日本語に訳出しており、その中から66人の詩人作品340編を詩集『月下の一群』として、33歳(1922)で出版しました。
 10年におよぶ翻訳過程では、訳詩集出版は考えていなかったそうで、詩集のあとがきには、「好きな詩を日本語に移しかえる“筆のすさび”を楽しんだ」とあるそうです。卓越した訳詩は当時の日本詩壇に大きな影響を与えました。
 作曲者の南弘明(1934-)は私と同年の電子音楽作曲家で、合唱音楽に造詣の深い音楽家です。「月下の一群」を書店で立ち読みし、たちまちに惚れこんで、楽譜初版本を書いたとされます。
(1)のすばらしい5つの訳詩それぞれに呼応した旋律・リズムは、男声合唱ならではの魅力にあふれています。

 
  前回の定期公演以来指導していただいている仁階堂孝氏は、数多くの合唱団を指導され、海外でも大活躍されている気鋭の指揮者です。
  常任指揮者を務める8団体の一つEnsemble Evergreen は、エストニアの
合唱コンペティション2003の室内合唱部門で第一位を受賞し、レクチャーで4度招聘されたグアテマラ共和国から来日したビクトリア合唱団の全国公演は大成功でした。
 息子と同じ年頃の仁階堂先生のすばらしい音楽的感性と言葉を大切にされる深い詩的精神を敬愛し、精緻できびしい合唱指導の下で練習を重ねています。
2年間の成果である新生浦安男声の歌声が、みなさまの心にどのように響くか、一抹の不安とともに、ドキドキわくわくしています。  
 ご多用のこととは存じますが、2年ぶりの“浦男”晴れのステージをお聴きいただきたく、ご招待のチケットを同封して、ご来場をお待ちいたします。
 一人でも多くの方々に聴いていただきたく存じますので、お越しになれない場合は、お返しくださるか、どなたかに差し上げてくだされば幸いです。
末筆ながら、ご健勝をお祈りします。

 2009年9月吉日  弁天にて



添付画像

2009/09/25 09:57 2009/09/25 09:57
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