


暑中お見舞い申しあげます。
日夜、猛烈な暑さがつづきますが、いかがお過ごしでしょうか。
私は、別紙(「文ちゃんの浦安残日録」の最新原稿)のような心境で、元気な日々を送っています。
今日は、《唄い》から、『Voce Lirica ヴォーカルコンサート』のご案内をさせていただきますが、妻のお千代共々に敬愛する川本愛子先生主宰の会(5回目)で、私は、初めての参加です。
私たちが数年前、「浦安 童謡を歌う会」(川本先生主宰)会員の“ご縁”をいただき、昨年、お千代が女声合唱団「水芭蕉」(同上)に入団して、川本先生の発声・歌唱の綿密なご指導に感服して、私に個人指導を受けることを勧めたのが、『Voce Lirica ヴォーカルコンサート』への参加につながりました。
浦安男声合唱団のテノールに在籍された本間亮三・菅隆彦両氏や江戸川区の合唱イベントでご一緒した橘田せつ子さんは、このコンサートのご常連です。
「童謡を歌う会」での歌唱は、特別養護老人ホーム「愛光園」を訪問するボランティアグループ『歌の花束』の4年にわたる月例コンサートで、たいへん役立っています。
ステージでのソロは、十年前の「65歳からの歌唱コンクール」(審査員:大中恩、安田祥子、小原孝等、2日間の予選で63組から11組選抜)の『発表演奏会』で、『落葉松』『マイウエイ』を唄って以来です。
私が唄う組曲『沙羅』(清水重道 作詞、信時 潔 作曲)は、浦安男声合唱団の2000年定演、日本建築学会男声合唱団創立20周年演奏会(2005年)、JFMA-GLEEチャリティーコンサート(2013年)のコーラス(トップテナー)で唄いましたが、男声合唱組曲の定番中の“定番”です。“浦男”の前常任指揮者若林 浩先生のソロ(全8曲)を聴いて感動したこともある名曲です。
組曲『沙羅』全曲から『丹澤』『あづまや』『鴉』を選ばれた川本先生は、『丹澤』の情景は、私が絵を描くイメージに、ほかの2曲は、ながく長唄をやった私にぴったり、と仰っています。
クラシック歌曲をソロで唄ってこられた諸先輩と同じステージに上がるのは不遜の極みと存じますが、別紙の心境から、“冥土への土産”のつもりで唄わせていただきますので、ご多用と猛暑のなか、期日間際のご案内で恐縮に存じますが、ご来聴賜りますようお願い申しあげます。
なお、熱中症が懸念されるお天気のときは、決してごムリのないようお願いし、末筆ながら、ご健勝をお祈りいたします。
「第43回みなづき会展」のご案内 松本文郎
水無月となるやいなやの台風接近もありましたが、いかがお過ごしでしょうか。
この25日で、喜寿+1歳になりますが、『文ちゃんの浦安残日録』に書きましたように、前立腺がんと穏やかに向きあいながら、元気に日々を送っています。
第43回「みなづき会展」を開催しますので、会期間際のご案内で恐縮に存じますが、お出かけの折にでも、ご高覧くだされば幸せに存じます。
『ふれあいの森公園の春』 水彩 10号色紙2連
昨年『「被災地浦安の早春』に続き、東日本大震災から1年たった公園を描きました。
この公園は、ゴミ焼却場の移転跡地利用計画に住民参加で「ふれあいの森公園を育む
会」を立上げて、開園後の利用管理を市から任されているユニークな公園です。
徒歩3分の近さで、朝夕の散歩はもちろん、季節ごとにスケッチを楽しんでいますが、満開の桜・森の新緑・大芝生・周回路などが、液状化に疲れた人びとを和ませました。
昨年の絵は、大芝生から眺めた桜並木・住宅地・建設中のスカイツリーなどでしたが、その風景を背に描いたのがこの作品です。
浦安ではいまも、液状化で傾いた家屋の復旧・建替や起伏陥没の応急処置がなされて
いた道路・下水道の本格復旧工事が、市内のあちこちで進行しています。
わが国建築技術の粋を集めて見事に完成したスカイツリーは、連日、大勢の見物客で
賑わっているようです。驚異的な自然力に畏敬の念を抱きながら、被災地の復興計画の実施が、人間の技術力を存分に発揮して、一日も早く着手されることを祈るばかりです。
『上野の森の建築素描2題』 木炭 10号色紙2点
このスケッチは、1月27日に観た北京故宮特別展「清明上河図」に触発され、上野公園を再訪して描きました。同図は、群衆の個々の動作・表情を描き分け、建物・樹木などの細部を驚異的な観察眼で微細に捉えた水墨絵巻でした。
帰りがけに、図に描かれた「南京櫨(はぜ)」の木を国立博物館の庭に見つけ、無性にスケッチがしたくなり、翌日、いそいそと出かけました。昼過ぎの公園入口の売店で、かんビール・つまみ・おにぎりを仕入れ、シニア特典の無料入場で、櫨の木の傍の建物を眺める芝に座り込みました。
この建物を描くのは2回目で、北斎展を観たあとの博物館新館前の噴水から、黄葉の銀杏大樹の背後に、水彩で描いたことがありました。
ビールを飲みながら構図を考え、ラフスケッチを済ませ、おにぎりを食べながら仕上げていきました。「清明上河図」の柔らかい毛筆ではなく硬いコンテなので、建物・樹木の全体を、粗い筆致の力感を意識して描きました。(第5回「文ちゃんの画文展」に出品)
東京文化会館の建築は敬愛した建築家前川国男の力作。彼の師・コルビュジェ設計の西洋近代美術館の庭の片隅でスケッチを始めようとしとき、若い監視員に、構内で描くのは遠慮してくださいと告げられましたが、ほんの短時間だけと頼んで、なんとか容認してもらい、1時間足らずで描きました。
長い猛暑・残暑から、やっと秋めいてまいりました。いかがお過ごしでしょうか。
喜寿老人の私は、相変わらず、唄い、描き、詩文を書く日々を、お千代と元気に送っています。
東日本大震災で液状化被害をうけて中止した「第10回浦安男声合唱団定期演奏会」
でしたが、半年余を過ぎても復旧のままならぬ被災地のみなさんに寄り添う気持ちを込めた歌をお届けできればと、<特別演奏会> を開くことになりました。
浦安市文化会館小ホールでの開催でチケットに限りがあり、ご来聴くださる方にだけ差し上げたく、ご案内チラシと「歌詞集」〈当日のプログラムに挿入)を添付しますので、ご高覧の上、電話〈留守電でも〉・ファックスへお申し込みくだされば幸せに存じます。
心を響かせて唄う三つのステージの演奏曲目について、私の想いの一端は以下です。
<北欧合唱曲選>
バルト三国のラトビアなどの民謡調の歌と宗教曲です。
「いつだって歌がある」と「わが祖国を見渡すのだ、わが子よ」の日本語訳は英訳詞を介した拙訳です。(団員野口和彦さんの逐語訳も参考にしました)
前者には、男たちが渇望する“歌・ビール・乙女”への賛歌が高らかに唄いこまれ、後者には、長く他国への従属を強いられた祖国への深い愛を感じます。
<ある真夜中に>瀬戸内寂聴:詩 千原英喜:曲
寂聴さん(八十九歳)の詩に魅了された気鋭の作曲家千原さんの男声合唱とピアノが緊密に絡み合う組曲です。“迷いと苦悩”“愛する幸せと感謝”“祈り”“時空を超えた愛”の四曲は、男女の愛→人々の幸福と平和への祈り→時空を超えた愛へと昇華してゆく音楽表現豊かな作品です。
<唄う歓びを>
みなさんに親しまれ、また親しんでいただきたい歌の数々です。
「中国地方の子守唄」は、お千代と私の故郷に近い地方のものとされていて、そのお陰か、この地で全国民謡大会も開催されました。山田耕作の採譜ですが、かなり古くからあったと思われます。ややコワイ言葉もある子守唄で、私の母親が唄ってくれたことはありません。
「Sing Along」と「星に願いを」も拙訳です。前者は、オジサン男声合唱団を意識した訳語を、後者は、唄う原語に添った訳詩を心がけました。
「風の歌」は、「ある真夜中に」でご縁ができた千原さんに浦男が委嘱した、男声バージョンの初公演です。作曲者の意に適う歌唱ができるとよいですが・・・。来春の浦安市合唱祭の講評をお願いする話もあるようです。
「南海譜」を作詩した故谷川雁の兄者で民俗学者・歌人の谷川健一さんとは、短歌同人「層」でご縁がありました。
東日本大震災後の国内だけでなく世界各地で、被災者の苦悩を慰め、再起を励ます歌声が沸き起こりました。私と同じ食道がん手術で再生された小澤征爾さんが、「歌には不思議な力があると、思いを新たにしました」と仰いましたが、そのとうりだと思います。
その想いをみなさんと共有できる演奏会へのご来聴を、切にお願いいたします。
立秋を過ぎても暑い日々がつづいています。お元気でお過ごしのことと拝察します。
今年もまた、「日比谷彩友会展」開催間際のご案内となりましたが、ご容赦くださり、おついでの折にでもご高覧賜れば幸せに存じます。
なお、猛暑のさなかですので、決してご無理をなさらないようお願いいたします。
<ご案内>
日 時: 8月23日(火)~28日(日) 11時~18時
最終日は15時まで
場 所: ギャラリーくぼた 4,5階 京橋2-7-11地下鉄京橋駅徒歩3分
Tel. 03-3563-0005
私の出品作品は下記2点です。
『夏の能登金剛』水彩・パステル 30号
今月初めの「能登半島ふたり旅」の折のスケッチから構想した作品です。
「巌門」付近を遊覧船で回り、夏の海に似合う力強い景観に魅惑されました。
荒々しい巌塊、樹木と山、美しい海の色のハーモニーを表現したかったの
ですが、想いばかりが先行した拙い作品です。
30号の水彩は久しぶりですが、時に、大きな作品にチャレンジするのも、
絵を描く楽しみの一つと実感しました。
『ミニスケッチ集』水彩・ハガキⅹ11枚(10号パネルにレイアウト)
バスツアーだったので、スケッチ時間は一箇所当たり10~15分でした。
画仙ハガキ18枚綴じのスケッチブックを、3日間で使い切りました。
限られた時間で対象を紙面に捉える“寸描”のスリルが好きで、ガイドさん
や旅の道連れの方々が、“早描き”に驚いてくださるのが、また励みになります。
やはり、夢中で描いている至福の時間は、天恵というほかありません。
末筆ながら、ご健勝をお祈りいたします。
2011.8 吉日
松本文郎 拝
「第42回みなづき会展」のご案内
東日本大地震で未曾有の災害をもたらした自然は、季節どうりの満開の桜と風に薫る新緑で、傷つき疲れたこころを癒してもくれました。
今年の「みなづき会展」を下記により開催しますのでご案内申しあげます。ご多忙とは存じますが、ご高覧くだされば幸せに存じます。
『被災地浦安の早春』(ふれあいの森公園)水彩・10号色紙2連
遠浅の海を埋め立て小さな漁村から東京ディズニーリゾートに変身した浦安の街は、震度5の地震による液状化現象で、思いがけない被災地となりました。
被災の詳細は、このブログの『文ちゃんの浦安残日録』に記しています。
この公園はごみ焼却場が海岸に移転した跡地で、地域住民が公園建設企画に参加し、「ふれあいの森公園を育む会」を立ち上げて、開園後の管理・運営を市からまかされているユニークな公園です。
徒歩3分の近さで、朝夕の散歩はもちろん、季節ごとにスケッチを楽しんできました。池と流れのビオトープを描いた拙画に詩を付して贈った大きな額が、公園一角のグリーンハウス内の正面に掲げられています。
今回の作品は、震災約一ヶ月後の「花まつりの日」から3日ほど通って描きました。見明川沿いの桜並木が咲き誇っている背後の家並の中には、液状化で傾いた家屋もかなりあり、当時、寸断した上下水道・ガスの復旧は未だでした。
東京タワーは先端が曲がりましたが、建設途上のスカイツリーはなにごともなく“ヨカッタ”と、実際の位置より左に、エイヤッとばかり移動させました。
巨大災害時の情報通信の途絶がいかに重大かを体験した大地震でしたので、無事な雄姿に登場してもらったわけです。
描いた枯れ芝は一ヶ月ほどで緑の原となって、少年サッカーチームの練習やシニア男女のグランドゴルフで賑わい、裸木らは新緑の衣をまといました。
自然の一部であるの人間は謙虚に生きなければ、と想いながら描きました。
第30回「市美術展」のご案内
見明川住宅内のケヤキ・クヌギ・サクラなどの紅葉が、眼を楽しませてくれています。
暦の上では立冬を過ぎましたので、まさに“冬紅葉”です。
今夏の長い猛暑の余韻が先ごろまで残っていたのが、急に、冷え込んできましたので、紅葉の発色はとても鮮やかで、住まいの周り、川沿いの桜並木、「ふれあいの森公園」の木々の“錦秋”に、絵心を誘われている日々です。
冬紅葉眺むベンチに陽の温し ふみを
さて、「市美術展」のご案内が、諸事多忙にまぎれ、たいへん遅まきとなりました。
あしからずご寛容くださり、ご高覧くだされば幸いに存じます。
この公募展には、平成7年に初入選してから毎年出品してきました。
初めて応募した頃、2千人を越える来場者があると聞き、個展・グループ展に比べて大勢の人びに見てもらえるのがうれしくて、今日に至りました。
今年の応募作品は『原初の光』(墨彩・20号)と題した、心象的な絵です。
ビッグバンで始まったとされるこの宇宙に光が生じ、太陽系で46億年経った地球にも、光が絶え間なくそそがれてきました。
数百万年前に猿類から分化した人類は、ながい年月のなかで、知恵と富を蓄積して
文明を築いてきましたが、初めは平和だった人類社会に、富と統治権力をめぐる争いや戦争が生じ、折々に聖人が現れてその非を教えました。釈迦、キリスト、ムハンマドらです。
それらの教えにもかかわらず、いまだに争いや戦争が絶えません。
『原初の光』は、人類出現以前の朝の光のイメージを作品化したものですが、この宇宙の地球という星に生を享けた私なりの、人類融和への祈りのメッセージです。
自己流の墨彩・水彩の作品は「日本画」部門に応募・展示されてきましたが、伝統的画法の技術も不勉強で未熟な、“想い”ばかりの拙画です。
ご高覧くださり、ご感想を伺うことができれば、望外の喜びに存じます。
「松本文郎のブログ」に長期連載中の『アラブと私』も(38)となり、数日後の原稿締切り前の執筆に集中したいところですが、“錦秋”の彩りが褪せるのが気がかりです。
執筆の合間の散歩にスケッチブックを携え、移りゆく秋色を描きとめたいと存じます。
末筆ながら、ご健勝をこころからお祈り申しあげます。
平成22年 神無月 吉日.
松本文郎 拝
記録的な猛暑とその余韻が長引いていましたが、ようやく秋めいてきました。いかがお過ごしでしょうか、お伺いいたします。
私は、喜寿を迎えましたが、あいかわらず、唄い、描き、詩・文を書く日々を元気に過ごしています。
今年も京葉男声合唱連合の演奏会が近づいてきました。ご多忙のなかを恐縮に存じますが、ご来場賜われば幸せとご案内申しあげます。
参加6団体各ステージでの浦安男声合唱団の曲目と、200人の男たちが唄う合同演奏曲について、ご参考までに、私の想いを述べさせていただきます。
浦安男声合唱団:男声合唱とピアノのための組曲『ある真夜中に』
瀬戸内寂聴 作詞 千原英喜 作曲
寂聴さんの詩に魅了された作曲家千原英喜さんの言葉に、「第1曲:迷いと苦悩、第2曲:愛する幸せと感謝、第3曲:祈り、第4曲:時空を超えた愛、の各曲から成っている。スコアは、愛と祈りの曼荼羅宇宙。詞のひとつひとつが渦巻く星雲のように謎めき、交響し、エロスの香りを放つ」とあります。
一昨年からの常任指揮者仁階堂 孝先生は、浦男ほか8合唱団の常任指揮者、国内外の講習会・合唱祭の講師・客演指揮者として縦横の活躍をされています。作曲家の新作紹介にも意欲的に取り組まれ、松下 耕、信長貴富、千原英喜、瑞慶覧尚子氏など、様々な作曲家の作品の初演指揮をされています。
間宮芳生、小林秀雄に師事し、日本の古典・伝統音楽と西洋音楽との融合を探求する作曲家と、波乱の人生遍歴から仏門に入ってなお、文学の創造に情熱を燃やしてやまぬ老女流作家の魂の合体は、あなたの心に強く響くことでしょう。
われらがマドンナ・ピアノの若山圭以子先生は、“男声合唱とピアノのための”この曲に心底魅入られたご様子なのに、ふらつく私たちの合唱との競演どころではなくて、凛としたお顔に、時折、童女の笑みを浮かべて、叱咤激励してくださっています。
かなり高い平均年齢の人生経験で培った私たちの感性を総動員して、このすばらしい詩情と曲想に満ちた合唱曲を唱いきれるかどうか、祈りながら励む日々です。
京葉男声合唱連合:『智恵子抄巻末のうた六首』
高村光太郎 作歌 清水 脩 作曲
ひたむきにむしゃぶりつきて為事するわれをさびしと思ふな智恵子
気違ひといふおどろしき言葉もて人は智恵子をよばむとすなり
いちめんに松の花粉は浜をとび智恵子尾長のともがらとなる
わが為事いのちかたむけて成るきはを智恵子は知りき知りていたみき
この家に智恵子の息吹みちてのこりめつぶる吾をいねしめず
光太郎智恵子はたぐいなき夢をきづきてむかし此所に住みにき
作曲者清水 脩さんは、作曲の経緯を次のように述べられています。
「昭和16年秋に出版された『智恵子抄』に異常なほどの感動を覚えて以来、この愛情の詩に曲をつけたいと思いつづけ、東京交響楽団の委嘱で3篇を独唱と管弦楽に作曲し、最後には20篇の歌曲集にと思っていた。昭和39年、東海メール・クワイヤーからの作品依頼を、『智恵子抄巻末のうた六首』で果たし、この曲が生まれた」
東海メール・クワイヤーは、これを随意曲にした第17回全日本合唱コンクールへの出場で優勝しました。
この曲は、第一首をユニゾンの主題に、繰り返しを第1変奏として、以下五首の6つの変奏からなる“変奏曲形式”です。
高村光太郎は、「明治44年ごろ智恵子と出会い、結婚から智恵子の死までの24年間は、愛と生活苦と芸術への精進・矛盾と闘病との連続だったが、智恵子の純愛で浄化された私の精神は、智恵子の存在そのものの上にあった」と述懐しています。
智恵子死後の戦時下で、戦意高揚の詩を多く書いた光太郎は、戦争協力の詩を作った自責の念から、敗戦後2ヶ月で、花巻郊外に粗末な小屋を建てて移り住み、独居自炊の生活を7年間送りました。
高校の国語で詩集『道程』を学び、作品の高潔な精神性に強く打たれた私でした。
合同演奏の指揮者は、参加団体HGメンネルコールの常任指揮者大野俊彦先生です。八十路とは思えないお元気さと分かりやすい指導で、200人の男たちの声とこころを結び合わせてくださいました。
上手い下手を通り越した熱い想いの歌声は、きっと客席のみなさんに届くと信じます。
食道がん手術で再びのいのちを得た心境で、浦安男声合唱団と合唱団「洋(うみ)」に相次いで入団し、15年が経ちました。初参加した「浦安市民第九」のステージでの感動と両団からのお誘いがきっかけでした。
そのころのエッセイ『歌は私のいのちの響きです』に書いた歌への想いは、そのままどころか、いっそう強まっています。
私と同じ食道がん手術を受けられた小澤征爾さんが、復帰直後に仰っていました。
「心新たに、音楽・歌のすばらしさを痛感しました。ひたすらに駆けぬけてきた50年でしたが、音楽・歌について、深く考える時間を与えられました。どんな歌(風呂の中の鼻歌でさえも!)でも、人びとのいのちをかきたててくれます」
テレビインタビューの言葉そのままではありませんが、拙文の内容にも重なっていてとてもうれしく、今日を元気で過ごせるのも歌あってこそと、意を強くします。最近の“唄う”ことでは、市内の特別養護老人施設への”訪問コンサート”に参加しています。ピアニストと声楽愛好家の女性たちとご一緒に、毎月一回、10曲ほどの歌を高齢入居者の方々に聴いてもらったり、一緒に唄っています。
曲目は、『親子で歌いつごう 日本の歌百選』にあるような歌が多く、リクエストもいただきます。私は、「青い山脈」「誰か故郷を想わざる」「別れの一本杉」「恋人よ」を唄いましたが、口ずさんでいる方々の声に合わせると、とても嬉しそうでした。
歌を唄うことでいのちをかきたてられ、歌を聴いて喜んでくださる人びとに励ましの力を戴くのは、夢中で絵を描くのと同じ、至福の時間です。
ご多忙とは存じますが、“愛の歌”二題を一所けんめいに唄いますので、ぜひとも、ご来聴賜りますよう、こころからお願い申しあげます。
末筆ながら、季節の変わり目のど自愛とご健勝をお祈りいたします。
2010年10月 吉日
松本文郎 拝
暑い日々がつづいています。平素はご無沙汰していますが、お元気でお過ごしのことと拝察します。
今年も諸般の事情で、「日比谷彩友会展」間際のご案内になりましたが、あしからずお許しください。おついでの折にでもご高覧賜れば、幸せに存じます。なお、猛暑のさなかですので、決してご無理をなさらないようお願いいたします。
日 時: 8月24日(火)~29日(日) 11時~18時
場 所: ギャラリーくぼた 4,5階 京橋2-7-11地下鉄京橋駅徒歩3分
私の出品作品は下記の2点です。
『正月の真鶴画行』水彩・パステル 25号
今年の正月6日、白日会副会長の深澤孝哉先生のお宅を会員有志数名でお訪ねして、ご馳走になりました。美食家の先生はプロ並みの料理人で、地元の漁師さんやファンが届けた新鮮な食材で数え切れないほどの料理を振舞ってくださいました。先生宅にはワインの貯蔵室がありますが、暮れの地震で被害が出た由。全国から届く日本酒や焼酎を惜しげもなく勧められ、しこたま飲ませていただきました。
日比谷彩友会の一部会員参加の遊画倶楽部に所属する2人の画友と私は、先生宅近くの宿に泊まり、翌日、描き初めをしました。
一昨年は、先生ご案内の伊東で描いたので、今回は真鶴にしました。
房総半島まで見えるよく晴れた日で、漁港を見下ろす高台から、3枚連ねた画用紙に海のパノラマ風景を描きました。大きな画面なので、気合をいれて一気に仕上げました。
『心象・原始朝光』 墨彩 20号
今年の「みなづき会展」に出した墨彩『井の頭公園の夜桜』に好評をいただいたので、墨彩で心象風景を描きました。
深澤先生が何十年もの毎朝、日の出の光を捉える修行をされ、積み上げたスケッチが背丈にもなると伺い、私なりに、朝光を描くことにチャレンジしてみたのです。
人類が出現する以前のような風景を照らす朝光のイメージです。山並みを描くのは、阿賀野川畔に立つ老舗旅館の座敷から望む遥かな重なりを、5連の画用紙に墨彩で描いた大パノラマ以来です。
対象を目の前にしてほぼ仕上げる現場主義の私ですが、時折り、心象的な絵を描くのも楽しくなってきました。
末筆ながら、ご健勝をお祈りいたします。
2010.8 吉日
新緑の彩りが日増しに濃くなっています。
喜寿の眼にげにも眩しき新樹かな ふみを
今年また、会期寸前となり恐縮ですが、「みなづき会展」のご案内をさせていただきます。
京橋方面へお出かけがあって、ご高覧くだされば幸せに存じます。
「第41回 みなづき会展」
会期: 2010年6月14日(月) ~ 19日(土)
11時~18時半 (最終日のみ2時半まで)
会場: GALLERY KUBOTA(ぎゃらりーくぼた)5階
中央区京橋 2-7-11 TEL: 03-3563-0005
出展作品: 『春宵 井の頭公園』 墨彩・900x450
花の季節に毎年訪れる井の頭公園ですが、数年ぶりに夜桜を描きました。
前回は池中央の橋を渡った左の岸辺に立つ枝垂れを描きました。
1時間ほどして、傍でオカリナを吹いていた黒いドレスの女性に、「貴女は、桜の精ではありませんか」と挨拶し、微笑みを返された不思議な宵を想い出しました。
今回は、枝垂れよりも少し先の老木2本です。
閉門2時間前の新宿御苑で桜並木を描き、吉祥寺の焼き鳥の老舗で一杯やって辿り着いた夜の公園は、花見客の喧騒で賑やかでした。
空いていた水際のベンチに道具を並べ、ほろ酔いの勢いで一気に描きました。後ろで、どこかの会社の若い男女の一団がかなり酩酊気味で、乱痴気騒ぎ寸前の有様でした。
その怪しげな空気を背にし、ためらいなく筆を走らせた画面では、水に姿を映した老桜らが、まるでヤケクソで踊っているようでした。
私の会場当番は16日(水)・18日(金)の2時半から6時半までです。
末筆ながら、ご健勝をお祈りいたします。
平成22年水無月 吉日
チリ大地震の津波警報発令で、愛犬トビーと散歩に行った高洲海浜公園の遊歩道に入れてもらえず、過剰な警備のように感じましたが、安全への行政措置と受けとめました。
東京湾最奥の“海辺の街”浦安で、津波騒ぎの余波を実感した一日でした。
さて、昨日は雛祭りでしたが、毎春の「浦安市合唱祭」も間もなくです。
第23回の出演合唱団は15団体。3月7日(日)1時半開場・2時開演、浦安市文化会館大ホールで開催されます。
各団体の演奏の前に、全員で『みんなの歌』(浦安市合唱連盟20周年記念歌)
を唄いますが、公募された歌詞に拙詩が選ばれて、鈴木憲夫先生に作曲が委嘱された歌です。2008年春の合唱祭で初演されました。
同年開催の合唱団「洋(うみ)」、浦安男声合唱団の定期公演でも唄ったので、お聴きになった方々もあるでしょう。(歌詞:別紙)
今春の合唱祭では、浦安男声合唱団の出番はトリ(最後の出場)ですから、4時半過ぎの出演になります。貴重な日曜日とは存じますが、ご来聴くださいますよう、ご案内させていただきます。
二つの演奏曲目について、簡単にご紹介をします。
<この星に生まれて> 作詞: 瀬戸内寂聴 作曲: 千原英喜
この歌は合唱組曲『ある真夜中に』の第2曲で、「寂聴流・愛の四つの階梯」の第二・愛する幸せと感謝の詩が唄われます。
第1曲<愛から悩みが生まれ>-迷いと苦悩、第3曲<寂聴の祈り>-祈り
第4曲<ある真夜中に>-時空を超えた愛、と今回唄う第2曲からなる合唱曲です。
作曲者の千原英喜は、日本音楽コンクール、笹川賞、イタリア・トリエステ市賞、ドレスデン・ウェーバー作曲賞、グイード・ダレッツオ作曲コンコルソ等に入賞し、日本・東洋の民俗・宗教性と西洋音楽(特にキリスト教の聖歌)を結びつけた合唱曲作品が特徴的とされています。
コーラスとピアノが緊密に絡み合いながら進行するこの曲を、音楽表現豊かに、愛のコンチェルト・祈りの賛歌として唄いあげるように、と作曲者自身が楽譜の“はじめに”に書いています。
2011年春の第10回定期演奏会では、この組曲の全4曲を唄いますので、
詩と曲のダイナミックな構成の魅力を、より感じていただけるかと存じます。
指揮者仁階堂孝先生は、平均年齢が60歳近い男らにしか出せない叙情性を、会場いっぱいに届けるように、と指導してこられました。
「(ご来場の)あなたに出逢えてよかった・・・」との想いを籠めて唄います。
<MUZU MUZOS BUS DZIESMA> VALTERS KAMINSKIS
(いつだって 歌がある) 口語訳詩: 松本文郎(英訳文より)
この歌はラトビア(バルト三国の一つ)語が原詩で、この地方の民謡を採譜して曲作りされたそうです。
縁がなかった国と言葉ですが、北欧の人たちが待っていた春の光の耀きを、
歌の祭典の情景のなかで、明るく、楽しく詠いあげている詩です。
仁階堂先生は、ラトビアの隣国エストニアの合唱コンペティション2003の室内合唱部門第一位を受賞したり、レクチャーに招聘されたグァテマラ共和国のビクトリア合唱団の来日公演を成功させたりで、国際的にも活躍されている
気鋭の合唱指揮者です。
歌のタイトル「いつだって歌がある」の“ムジュ、ムジョス”は、“永遠に”の意で、真っ白い靴下の乙女にムズムズしている若者の感じがよく出ています。
かなり年配の私たちオジサンにうまく唄えるかどうか? ご期待ください。
敬愛するわれらがマドンナ若山圭以子先生は、浦安きってのピアノ伴奏者なので、無伴奏のこの曲をご一緒できなくて、残念至極です。
なお、前にもイギリス古歌の文語訳に関わりましたが、今回は口語訳(別紙)を試みました。目を通されて、歌詞の内容を感じとってくだされば幸せです。
ところで、今年は喜寿を迎えます。食道がんで再びのいのちを得た喜びで、
少年時代に好きだった音楽(唄う)絵画(描く)文芸(詩文を書く)を再開し、
いろいろなメッセージを発信しながら、終の棲処の残日を生きています。
仕事人間の頃は地域の根無し草でしたが、第二の故郷と思えるようになったのは、浦安で出会った方々のお陰です。まさに、「人生は出会い」ですね。
中高一貫校で出会った妻のお千代(外国の若者に日本語を教えて20余年)をサポートする私の主夫業も板についてきました。
新春一番の慶事は、バンコクから帰国3年目の孫遥大が中高一貫の志望校に合格したことです。ジジ・ババの私たちのように、伸びのびとした学校生活で、自分らしい生き方で成長をしてくれるのを楽しみにしています。
T新聞社開設の「松本文郎のブログ」の連載『アラブと私』も24回目で、エッセイ、画文、コーラス、ポエム、雑記などの連載も充実してきましたので、
ご高覧くだされば幸せに存じます。(検索は、松本文郎の4文字)
合唱祭当日のお天気が心配な週間予報ですが、春を呼ぶ合唱祭へのご来聴を
団員一同、こころからお願い申しあげます。
末筆ながら、ご健勝をお祈りします。
会期:11月14日(土)―22日(日) 10時―18時半 (最終日は15時まで)
会場:浦安市中央公民館 (東西線浦安駅から徒5歩分)
私の作品の画題は、『色は匂へど常ならむ』です。
近くの「ふれあいの森公園」の一隅に咲き誇っていた向日葵を写実的に描いた折しも、ロック歌手の忌野清四郎が亡くなったので、一転、初めてのコラージュにしました。
向日葵は夏の日盛りが似合う花ですが、短い間に刻々と変わる様は、仏教的無常観の「色即是空」そのものです。
平安初期以降の成立とされる、ひらがな47文字の歌「伊呂波歌(いろはうた)」も、この無常観の今様歌です。
「生者必滅」「栄枯盛衰」。森羅万象は必ず元の「無」に戻ります。
どんな時代の一人ひとりのいのちも輝いて消えて行きます。
清四郎さんへのオマージュに、プラハの春を目撃した時計台・京の時代祭の巫女・6,70年代の若者の怒りなどを配しましたが、夫々の時代の輝きを感じていただければ、うれしいです。
応募区分で日本画に出品しましたが、伝統的な画材・技法からはそぐわないかもしれません。自己流の技術の拙さは自覚しますが、私なりのメッセージを伝えたかったのです。
ふれあいの森公園のグリーンハウスに、ビオトープと森の拙い画・詩のメッセージが掲げられていますが、18号台風で倒れたプラタナスの遺影画と鎮魂の詩を加えていただきました。
ご来園、ご高覧くだされば幸せです。
なお、T新聞社の「松本文郎のブログ」にも画・文が連載されていますので、ご笑覧ください。
末筆ながら、新型インフルにめげないご健勝をお祈りします。
2009年11月吉日 松本文郎 拝
秋めいてまいりましたが、いかがお過ごしでしょうか。
敗戦前年、広島から疎開して被爆をまぬがれた私は後期高齢者とやらの仲間入りをし、比治山下の小学校で死んだ級友たちがもてなかった時間を生きてきました。 詩心の湧きて筆とる秋の夜ふみを政権交代で高齢者も大事にする社会が実現し、“ヤリクリ自適”の年金暮らしで、唄い、描き、詩・文を書くことを楽しみながら、天寿を全うできるようにと願っています。
その中で、浦安男声合唱団第9回定期演奏会のご案内をさせていただきます。
一昨年の第8回も、多数のご来場のお陰で盛況裡に幕を閉じ感謝しています。
拙詩の『みんなの歌』(浦安市合唱連盟20周年記念歌)と、『星に願いを』の短い初ソロも聴いていただき、とても幸せでした。
いつもながらの演奏曲目のご紹介です。
<第1ステージ> 「無伴奏男声合唱曲 新実徳英作品より」
詩人で思想運動家だった谷川雁が、新実徳英の曲作品に詩を付けた“曲先”の歌曲集から選んだ7曲です。
歌詞をご覧になれば、激しさと繊細さを併せもつ谷川雁の、時代をみつめる鋭くも優しい想いが心に響いてくるでしょう。旧来の男声合唱愛唱歌の定番に際立つダイナミックな曲想に、叙情性豊かな旋律を唄いあげる新実徳英の曲の数々が加わったことは、私たちの大いなる幸せです。
『南海譜』や『壁きえた』には戦争の悲惨と平和の喜びが詠みこまれています。
『われもこう』『卒業』の歌唱には、叙情に溺れない自制が求められますが、
私のとても好きな歌曲です。
雁の兄で在野の民俗学者・歌人の谷川健一は、短歌同人「層」の会員のとき知己を得えましたが、『南海譜』の詩心には、南の島々を旅した健一の“時空”に通低するものを感じます。
<第2ステージ> 「ボーン・ウイリアムズの男声合唱曲より」
イギリスの作曲家:レイフ・ボーン・ウイリアムス(1872-1958)の作品には、「田園交響曲」などの、イギリスの田園風景を彷彿とさせる牧歌的な作品が多くあります。
彼は、人びとの暮らしを唄い込んだ民謡の音楽的魅力にひかれて、イギリス各地の民謡を採譜し、伝統音楽の継承とその評価を高めることに貢献しました。
前回のイギリス古詩の翻訳につづいて今回も、訳詩にかかわらせていただきましたが、詩を書く人間の一人として、自分の詩に曲がつけられ、歌い継がれるのは、まさに至福というほかありません。
すべての演奏曲目の詩と訳文がプログラムに掲載されていますので、演奏前にお目通しくださると、詩心をより深く感じとっていただけるかと存じます。
みなさんが親しまれてきたイギリス民謡に、新たな数曲が加わるでしょう。
<第3ステージ> 「フランス詩による男声合唱曲集 月下の一群(1)」
わが国の代表的詩人・フランス文学者:堀口大学(1892-1981)は20歳の頃からフランス近代詩を日本語に訳出しており、その中から66人の詩人作品340編を詩集『月下の一群』として、33歳(1922)で出版しました。
10年におよぶ翻訳過程では、訳詩集出版は考えていなかったそうで、詩集のあとがきには、「好きな詩を日本語に移しかえる“筆のすさび”を楽しんだ」とあるそうです。卓越した訳詩は当時の日本詩壇に大きな影響を与えました。
作曲者の南弘明(1934-)は私と同年の電子音楽作曲家で、合唱音楽に造詣の深い音楽家です。「月下の一群」を書店で立ち読みし、たちまちに惚れこんで、楽譜初版本を書いたとされます。
(1)のすばらしい5つの訳詩それぞれに呼応した旋律・リズムは、男声合唱ならではの魅力にあふれています。
前回の定期公演以来指導していただいている仁階堂孝氏は、数多くの合唱団を指導され、海外でも大活躍されている気鋭の指揮者です。
常任指揮者を務める8団体の一つEnsemble Evergreen は、エストニアの
合唱コンペティション2003の室内合唱部門で第一位を受賞し、レクチャーで4度招聘されたグアテマラ共和国から来日したビクトリア合唱団の全国公演は大成功でした。
息子と同じ年頃の仁階堂先生のすばらしい音楽的感性と言葉を大切にされる深い詩的精神を敬愛し、精緻できびしい合唱指導の下で練習を重ねています。
2年間の成果である新生浦安男声の歌声が、みなさまの心にどのように響くか、一抹の不安とともに、ドキドキわくわくしています。
ご多用のこととは存じますが、2年ぶりの“浦男”晴れのステージをお聴きいただきたく、ご招待のチケットを同封して、ご来場をお待ちいたします。
一人でも多くの方々に聴いていただきたく存じますので、お越しになれない場合は、お返しくださるか、どなたかに差し上げてくだされば幸いです。
末筆ながら、ご健勝をお祈りします。
2009年9月吉日 弁天にて