11回『IKSPIARI第九』
 

 

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ディズニーリゾートの恒例「カウントダウン・セレブレーション」の一つ、『IKSPIARI第九』も11回目となった。公募合唱団のトップテナーとして毎回唄ってきた。それ以前、初めて第九を唄ったのは浦安市の「市民第九」だった。

 

食道がん手術で再びのいのちを得て立ったステージの感激は、今も忘れてはいない。

外山雄三指揮・東京フィルハーモニーとソリストは佐藤しのぶなど豪華な顔ぶれだった。

「市民第九」には連続10回参加したが、イクスピアリ・カウントダウン第九が始まって数年間は両方で唄った。以来、「市民第九」は開催されていないが、かれこれ20年の「第九」。

「第九」はシラーの詩に感動したベートーベンが30余年の歳月をかけて完成したとされる。

ロマン・ロランが、「ベートーベンは不幸な星の下に生まれた」と言ったように、7歳で母に死別し、飲んだくれの父と弟たちを養いながら苦闘した挙句、26歳のころから急に悪化しはじめた耳疾の絶望から、自殺まで決意したという。

しかし、想像を絶する人生の苦悩に立ち向かったベートーベンはやがて再生し、音楽創造の道を驀進する。苦悩に苛まれつづけた魂を奮い立たせたのが、若いころに敬愛したシラー

の詩『歓喜に寄す』だったようだ。まさに、「苦悩から歓喜へ」である。

 

 シラーの歓喜・人類愛を主題にした高邁な理想主義的観念は、ベートーベンの主義主張と一致していたといわれている。

「第九」の詩『歓喜に寄す』は、人類社会の紛争・戦争で分断された人間が、創造主の下にひれ伏し、再び結び合わされる歓びを謳いあげている。

 シラーとゲーテを尊敬していたベートーベンは、ルネッサンス、フランス革命、米国独立宣言などを経て、中世の桎梏から目覚めた人間社会への応援歌として「第九」を書いたのではなかろうか。

 詩のフレーズの“星の座にいます父なる主”とは、キリストのような既成宗教の「神」ではなく、人智を超えた“サムシング・グレイト”、宇宙の創造主を意味していると思われるし、シラーの詩にたびたび出てくる「世界」は、人間社会を育む地球全体を捉えていたのではと私は考える。

 

「第九」が200年近くも歌い継がれ、不滅のような生命力をもっているのは、「世界」を心から愛したシラーとベートーベンの魂が結合した、稀有な作品だからではないか。

 人間が手にした科学技術への過信と傲慢を自戒し、謙虚に生き、愛と平和に満ちた「世界」を築くことを訴える「第九」は、ジョン・レノンの『イマジン』に通じている。

 レノンが、「宗教のない世界を想像してみろ」と唄ったのは、既成宗教のことであって、

“サムシング・グレイト”的な創造主までも否定したのではなかろう。

 ヒロシマ・ナガサキに投下された原爆など、人類どころか地球の全生命の危機をもたらす核兵器の廃絶をめざす人類社会にとって、「第九」「イマジン」は重要な意味をもつ歌である。

 

9・11テロへの報復戦争を意図した米国で、「イマジン」が、マスコミを通じて自粛させられたのは、ベトナム戦争反対の人たちの愛唱歌だったからであろう。

米国の伝統的フォークソングを現代につないだボブ・ディランもまた、神話の引用などの自由奔放な作風と社会権力の欺瞞性などを揶揄する詩で、世界中の若者に愛された。

私と同じ術法の食道がん手術を受けて再生した小澤征爾さんは、「音楽・歌の力はすごく、

魂をゆさぶり、いのちを鼓舞する」と言ったが、同じような心境で始めた「第九合唱団」への参加で多くの人びとと出会い、喜寿を迎えてなお、日々元気に生かされている私である。

 

             (2010.12.30/31にイクスピアリで公演)





2010/12/30 14:29 2010/12/30 14:29


「第九」のLOVE  &  PEACE        

                        松本文郎(建築家)

 
 私は昭和一桁最後の生まれで、75歳の男性(声)です。
 敗戦の前の年までヒロシマに住んでいましたが、学童疎開で原爆を逃れました。
 「第九」の合唱は、16年前のガンの手術で得た新しいいのちの歓びで、「浦安市民第九」と「イクスピアリ第九」に参加し、毎年唄ってきました。
 戦争があい次いだ20世紀を経たいまも、人類社会に戦火が絶えない状況は、ほんとうに残念でなりません。
 ベートーベンの「第九」作曲のきっかけは、争いと憎しみでバラバラになった人類に連帯を呼びかけたシラーの詩に、感動したからと言われています。
 アフガン・イラクでの戦火やCOP15の国際会議の難しさを目の当たりにしている私たちは、全世界に向けて、愛と平和への願いと祈りをこめて、「第九」のLOVE & PEACEを、声高らかに唄いたいと思います。
 平均寿命までの残日が短い私も、いのちの限り歌い続けます

 みなさんもご一緒に、こころと声を合わせてください。
 

         浦安市弁天3-2-43-2在住
         <所属合唱団>
         浦安男声合唱団々員 日本建築学会男声合唱団々友
         合唱団「洋(うみ)」元団員
         <作詞>
         浦安市合唱連盟20周年記念歌
         『みんなの歌』:鈴木憲夫作曲(2006年)
          NTT 社歌『日々新しく』:前田憲男作曲(1960年)ほか





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場所:2F セレブレーション・プラザ
※荒天時は、開催場所および内容が変更、中止となる場合があります
 

カウントダウン「第九」コンサート
毎年好評の「第九」のコンサートを今年も開催!近隣の
市民合唱団と浦安シティオーケストラの皆さまがお届けする、
荘厳なハーモニーをお楽しみください。
 

カウントダウン・ライブ 2010

出演:リチャード・ハートリー、THE SOULMATICS
実力派ゴスペルシンガー、リチャード・ハートリーと、
彼が率いるゴスペル・グループが登場。
新年の幕開けの瞬間を、熱気あふれるライブで盛り上げます。
※写真はイメージです

 
2009/12/25 11:52 2009/12/25 11:52

文ちゃんと第9回浦安男声合唱団定期公演


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2009/10/08 09:43 2009/10/08 09:43

浦安男声合唱団 第9回定期演奏会   歌 詞 集



Ⅰ 無伴奏男声合唱曲 新実徳英作品より    
谷川 雁 作詞


1.われもこう


あの色だけならば 暗すぎる にわかに 秋の日
すすきの道をふさぐ われもこう かがやく 深いくれない
風のままゆれ 霧のたびぬれ 遠くでうろこ雲 たずねてる
さびついた とびらをつくる毬(マリ)
エジプトそだちの 紅(ベニ)を見たか

2.アルデバラン

ほしぞら にくしや まふゆの ひとりたび
雲まを はしるは 牡牛の ひとつ眼よ
わたしを さらうか  その名は アルデバラン
つのなど おそれぬ  王女に なりたや
ふぶき こおり つらら みぞれ
ぼろきて あるいて 王子に いつあえる
このゆめ にくしや ほしふる 谷をゆく

3.南海譜

一 二
南のすな まぶしい影 潮がみちて 十日の月
いくさ果てて さびる錨 船底から のびる鎖
よせる波を くだくしずけさ わかい祖(オヤ)の こえの泡だち
魚(ウオ)よ 魚よ おなじ骨ぞ
孫よ 孫よ おなじ年ぞ
ともにうたえ 鮫のみやこで ともにあそべ 渦のもなかで
あわれ 時の 椰子の高さ あわれ 時の 珊瑚の赤さ

4.ちいさな法螺(ホラ)

ちいっちゃな魚(サカナ)に 化けたのさ
ちいっちゃな魚の おれだけど
流れをおよいで 海にでた 月夜にゃうろこが 銀になる
すなやまは 波がどどん みちしおの 浮かれ藻を
やどかりこ 泣いていた だてな鱶(フカ) 咬んでいた

家主に 追いだされ 歯みがき わすれたと
こぶしあげ わめいておった 長いつら しかめておった
おれは彼女を 水にいれ おれは野郎を 寝かしつけ
ひれをふるわせ 踊ったもんだ あごを海月(クラゲ)でこすったもんだ

ほーんとだぜ ほーんとだぜ

5.壁きえた

にしと ひがし みずは ながれ
そらを つなぎ あきの かおり
よるの みやこ おかの はてに
かべは きえた さくは いらぬ
 
どよめく とおり こちらの バンと
ぼだいじゅ ゆれる そちらの ミルク
グーテナーベント! ローザ! グーテンモルゲン! ペーター!
いきて あえた いきて あえた
 
もえろ まわれ もえろ まわれ
ひとの まつり ひとの まつり
もえろ かわれ もえろ かわれ
ひとの れきし ひとの れきし


6.春つめたや

何をすててきた 露したたる道に
何をすててきた 馬ひきずりだして
何をすててきた 燈(トウ)心(シン)草(クサ)噛んで

鎌の月のぼる おら恋していない
鎌の月ひかる おら恋していない
鎌の月しらむ おら恋していない

すみれ置いてきた 鳥うたわぬ岩へ
すみれ置いてきた かたつむりのそばに
すみれ置いてきた 空しののめさした

さても春つめたや

7.卒業

一  紙ひこうき 芝生で とばしたら
  折りたたむ かなしみが ひらいた
  この 白さは いつまで のこるのか
  天山北路の すなふる はなみずき
  まどがらすに さよなら 書いたゆび

二  友おくると 靴ひも 直したら
  いしみちに ゆうぐれが あふれた
  なぜ けものの わかさは つらいのか
  ボッティチェルリ うまれ日 しらべてた
  水たたえる あの目を わすれない


 
Ⅱ Vaughan Williams 男声合唱曲より       野口和彦・松本文郎 訳

1.The Farmer’s Boy ……………………… Old English Air

The sun went down behind the hill, across yon dreary moor:
はるか荒涼とした泥炭地を横切り 丘のむこうに日が沈んだころ
When weary and lame a boy there came unto a farmer’s door.
疲れ果てて足を引きずる一人の少年が農家の戸口に立った
“Can you tell me if any there be who will give me employ To plough and sow, to reap and mow and be a farmer’s boy.”
「耕し、種を蒔き、刈入れをする 作男の仕事をさせてくださるお方は いらっしゃらないでしょうか」 
   
The daughter said “Pray try the lad, no longer let him seek.”
娘が言った 「この若い人にさせてみて! もう仕事を探させないで……」
“O, yes, dear child” the farmer cried, for tears stole down her cheek.
「よし分かった 愛しい娘よ」娘の頬に流れる涙を見た父親は大声で言った
“For those who’ld work ’tis hard to wait, or wander for employ, To plough and sow, to reap and mow and be a farmer’s boy.”
「働きたい者には 作男の仕事を待ちわび探し求めてさすらうのは厳しいものだ」
 
  
In course of time he grew a man, the good old farmer died;
時が経ち 少年は大人になり 農家の人の善い老人は亡くなった
He left the lad the farm he had, his daughter for his bride;
老人は 農地と花嫁の娘を作男に残した
And now the lad a farmer is, he smiles and thinks with joy of the lucky day he came that way to be a farmer’s boy.
農家の主になった若者は 微笑んで、作男になろうとしてやって来た幸運な日に うれしく思いをめぐらせる


2.The Seeds of Love ……………… Traditional Somerset

1.I sowed the seeds of love, and I sowed them in the spring:
1.恋の種を蒔きました 蒔いたのは春でした
 I gathered them up in the morning so soon while the small birds so sweetly sing.
 朝すぐに 種をそろえました 小鳥たちがそれはいい声で唄っていました 
 
2.My garden was planted well with flowers everywhere.
2.庭いっぱいに 花々の種が ちゃんと育っていました
  But I had not the liberty to choose for myself of the flowers that I love so dear.   でも私がとても愛する花を 好きなように選ばせてはもらえませんでした
 
3.The gardener was standing by, and I asked him to choose for me.
3.一緒にいた庭師に 私の代りに 選んでほしいと頼みました
  He chose for me the violet, the lily and the pink, but those I refused all three.
  菫、百合、なでしこが選ばれましたが それら三つのすべて私は断りました
 
4.In June there’s a red rosebud, and that is the flower for me.
4.六月 紅薔薇の蕾がつきました それこそ 私にぴったりの花でした
  I often times have plucked that red rosebud till I gained the willow tree.
  その蕾をなんども摘みました 失恋するまでは

3.Linden Lea ………………………………… A Dorset Song

1.Within the woodlands, flow’ry gladed, by the oak trees’ mossy moot,
1.森のなかの花咲く空き地 オーク林の苔むした切株らの傍らで
  The shining grass blades, timber shaded, now do quiver under foot;  
  木漏れ陽にひかる草の葉群れが 足元に揺れている
  And birds do whistle overhead, and water’s bubbling in its bed,  
  頭上では 鳥たちが囀り せせらぎの水は さらさら流れる
  And there for me the apple tree do lean down low in Linden Lea.  
  そこでは 私のために 林檎の木が枝をさしのべている リンダン・リー
 
2.When leaves, that lately were a-springing, now do fade within the copse,
2.かつて 萌え出ていた小枝の葉も いまは 低い繁みに色あせている
  And painted birds do hush their singing up upon the timber tops;  
  色鳥たちの歌は 木々の梢に 鳴りをひそめ
  And brown leav’d fruit’s a-turning red, in cloudless sun shine overhead,  
  褐色の葉をつけた果実は 赤く色づき 雲ひとつなく晴れた空の下
  With fruit for me the apple tree do lean down low in Linden Lea.
  私のために実をつけた 林檎の木が 枝をさしのべている リンダン・リー
 
3.Let other folk make money faster, in the air of dark-room’d towns;
3.建てこんだ暗い都会で手早く金を稼ぐ者たちは好きにさせるがよい
  I don’t dread a peevish master, though no man may heed my frowns;  
  私のしかめっ面を誰も気に留めないが 文句たれの雇い主なんか 怖くはない
  I be free to go abroad, or take again my homeward road,  
  自由に選べたらと想う 外国に出掛けるか 故郷への道を辿るかを
  To where, for me, the apple tree do lean down low in Linden Lea.  
  そこでは 私のために 林檎の木が 枝をさしのべている リンダン・リー


4.Bushes and Briars …………………… Essex Folk-Song

Through bushes and through briars I lately took my way;
低木の茂みをぬけ野ばらの藪をぬけて いつもの道をやってきたのは つい先日
All for to hear the small birds sing and the lambs to skip and play.  
小鳥たちの囀りや 小羊らが跳びはね遊ぶのを 耳にしたくてね
I overheard my own true love, her voice it was so clear,
そのとき はっきり聴こえたんだ 心底 愛している彼女の声が
“Long time I have been waiting for the coming of my dear.  
「長い間待っているのよ あなたが来てくださるのを……
Sometimes I am uneasy and troubled in my mind, Sometimes I think I’ll go to my love and tell to him my mind.
ときどき 不安になったり 心配したり ときには、愛する人に 想いを告げに行こうと思うの
And if I should go to my love, he will say nay,
でも、私が押しかけでもしたら 愛しい人は拒絶(イヤ)でしょうね
If I show to him my boldness, he’ll ne’er love me again.”  
厚かましさを見せたら 二度と愛してくれないでしょうよ」


5.Loch Lomond ………………………………… Scottish Air

1.By yon bonny banks and yon bonny braes, where the sun shines bright on  
1.太陽がローモンド湖の空に耀いているあの静かな堤とゆるやかな斜面の傍に
  Loch Lomond, where me and my true love were ever wont to gae, on thebonny,
  bonny  banks of Loch Lomond.
   
  愛しい人とよく行ったものさ とても静かな ローモンド湖の堤
  O you'll take the high road and I’ll take the low road,and I’ll be in
  君は高い道を行き 低い道を行く僕は 先にスコットランドに着くだろうが、
  Scotland afore ye, but me and my true love will never meet again on the bonny,
  bonny banks of Loch Lomond.
    
  愛しい人と再会はできない なんて静かな ローモンド湖の堤
   
2.’Twas there that we parted in yon shady glen, on the steep, steep side of  
2.二人が別れたのは とても険しい ローモンド峰のあの暗い峡谷だった
  Ben Lomond, where deep in purple hue the highland hills we view,
  and themoon coming out in the gloaming.   

  深い紫のハイランド丘陵を望む地点 薄暮のなかに月が現れる
 
  {繰り返し  {efrain
 
3.The wee birdies sing and the wild flow’rs spring, and in sunshine the waters
 
3.小鳥たちが唄い 野の花々が咲き 陽ざしのなか 小川はまどろむ
  are sleeping, but the broken heart it kens nae second spring again tho’ the   
  それらの光景で悲惨(戦争など)が止んだとしても 失意の心は もう二度と
  woeful may cease from their greeting.  
  春を見ることはない

   { Refrain   { 繰り返し



Ⅲ 月下の一群       堀口 大學 訳


1.小 曲             -フィリップ・シャヴァネックス-

目を開(ヒラ)くと目を閉(トザ)すと
私には景色が見える、 私にはお前の顔が見える。

2.輪 踊 り                  -ポール・フォール-

世界ぢゆうの娘さんたちがみんな手をつなぎ合ふ気にさへなつたら、
海をめぐつて輪(ワ)踊(オド)りを、
踊る事さへ出来ように。
世界ぢゆうの若者たちがみんな
船乗りになる気にさへなつたら、
海に綺麗な舟橋を、世界ぢゆうの人たちがみんな、かけることさへ出来ように。
手を握り合う気にさへなつたら、地球をめぐつて輪踊りを、踊る事さへ出来ように。

3.人の云ふことを信じるな   -フランシス・ジャム-

人の云ふことを信じるな、乙女よ。
恋をたづねて行かぬがよい、恋はないのだから。
男は片意地で、男は醜く、さうして早晩、
お前の内気な美質は彼等の下劣な欲求を嫌ふだらう。
男は嘘ばつかりを云ふ。男はお前を残すだらう、
世話のやける子供と一緒に囲爐裏の側(ソバ)に。

さうして晩飯の時刻になつても男の帰つて来ない日には
恋があるなぞと信じるな、おお、乙女(ヲトメ)よ、
お前は感じるだらう、自分が祖母(ソボ)のやうに年老いたと。

さうして青空で上が一ぱいな果樹園へ行つて
一番によく茂つた薔薇の木の中に
一人で網を張つて、一人で生きてゐるあの蜘蛛を見るがよい。

4.催 眠 歌(海よ)      -アンドレ・スピール-

海よ、きかせておくれ、お前が転(コロ)がしていた碩(コイシ)のことを……、
お前はいつまでも飽きないか?
お前が砕いて砂にする岩のことをお前の波のことを、お前の沫(シブキ)のことを
お前の泡のことを、お前の匂ひのことを、
お前の露が島に芽生えさせお前の風がいぢめる松の木のことを。
牛乳のやうなお前の夜明けのことをお前の中に生れ、殖(フ)えて、さうして揺れている
魚(サカナ)のことを、貝のことを、藻のことを、海月(クラゲ)のことを、
さうしてお前の中に死んでゆく諸々(モロモロ)のことを……。

お前は何時までも飽きないか?
きかせておくれ、お前をひきつける青空のことを
お前の水に水鏡したがる星のことを
(お前の波は休みなくその影をくづしてゐる)
夜明にお前をのがれ、お前を呼吸し、お前をひきずる太陽のことを、
夕暮、お前は太陽を自分の臥床(フシド)に引止めて置きたいのだが
太陽はいつも逃げて了ふ。きかせておくれ、碩(コイシ)のことを。お前はいつまでも飽きないか?


5.秋 の 歌               -ポール・ヴェルレーヌ-

秋風のヴィオロンの節(フシ)ながき啜泣(ススリナキ)
もの憂(ウ)き哀(カナシ)みにわが魂(タマシヒ)を
痛(イタ)ましむ。
時の鐘
鳴りも出づればせつなくも胸せまり思ひぞ出(イ)づる来(コ)し方に
涙は湧く。
落葉ならね身をば遣(ヤ)るわれも、かにたこなた吹きまくれ逆風(サカカゼ)よ。



 

2009/10/04 00:00 2009/10/04 00:00