ベリヤの推薦でソ連占領軍が作り上げた神話

 1945年8月15日、日本が降伏しソ連軍が北韓に進駐して軍政を実施する過程で、北韓地域に共産衛星政権を樹立するため指導者として立てる人物が必要になった。平壌駐屯ソ連軍第25軍司令部が状況を把握して見たら、朝鮮共産党の指導者である朴憲永はソウルにおり、38度線の以北地域には信頼できる共産党員が見つからなかった。

 指導者候補として複数の人物を物色していたところ、自分たちがハバロフスクで 軍事諜報工作員として養成した金日成、つまり金亨稷の息子の金聖柱を発見する。ソ連軍政司令部の諜報局と特殊扇動部は、金聖柱の出生地から家族、学歴、成分、中国共産党入党や活動内容、パルチザン活動など、彼に対する一切の身元調査を終えた。

 ソ連軍政は、彼の本名が金聖柱で、満州地方で抗日パルチザン運動をしたのは事実だが、赫々たる功績を立てたのかについては根拠を発見できなかった。そして、本当に抗日パルチザン闘争をして功を立てたもう一人の‛金日成将軍’がいたという風聞が朝鮮人民の間に広く広まっており、朝鮮人民たちは解放された祖国にその将軍が凱旋することを待ち兼ねていることを知った。

 ソ連軍政司令部で勤務した朴吉龍の回顧によると、頭脳回転の速かった政治司令部の若い将校たちはこの風聞を利用して‛未来の首領’を作り上げる作戦を立てるべきだと指導部に建議した。この渦中に金聖柱と呼ばれる者は、普天堡を襲撃して有名になった金日成の本名である金成柱と発音が同じで、ロシア語やローマ字で書けば完全に同じであることを発見することになる。

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 ベリヤ(*ソ連の政治家、スターリンの右腕として数多くの人々を処刑した秘密警察の責任者)のソ連諜報部隊は年齢差を無視し金聖柱を金成柱にすり替え、彼を‛金日成将軍’だと捏造する。スターリンに金聖柱を北韓の最高指導者として積極推薦した人物は当時の実力者ベリヤだった。

 スターリンは1945年9月初め、ベリヤが推薦した金聖柱をモスクワに呼んでクレムリン宮の別荘で4時間も面接してから即座で“この人がいい。これから頑張って北朝鮮をうまく導いて行け。ソ連軍はこの人に積極的に協力せよ”という指令を下した。

 1945年9月18日、ソ連軍は金聖柱にソ連軍大尉の階級章をつけた軍服を着せて平壌に連れて行って、朝鮮人民たちの心の中で‛伝説の抗日闘争の英雄’と言われた金日成将軍として登場させて北韓の首領になるようにした。それで、彼の本名は金聖柱から金成柱に、仮名は金日成将軍に化けることになる。

 彼がソ連軍の肩車に乗って入北して北韓の実権を握って朝鮮労働党を創建しながら、彼は3重国籍と3重党籍者になった。彼はソ連軍政下でソ連軍大尉およびソ連共産党の下級党員として主人であるソ連軍とソ連共産党の指示を受けて、北韓にソ連の衛星共産国家の樹立に先頭に立った人物、それ以上でも以下でもない。

 これが金日成が遂行したという抗日武装闘争の隠せない素顔だ。この程度の粗末な宣伝扇動に対してまともな研究もせずに無防備状態で放置したことで、われわれは共産党の偽の抗日闘争主張に簡単に騙され、彼らの扇動に嵌って道徳的権威を毀損されてきた。

 ソ連軍に負んぶされてきた金日成は、ソ連軍指導部とソ連共産党党中央(スターリン)、そしてソ連共産党政治委員会の指令を受けて、分断された北韓に共産衛星国家を樹立してその首領にのぼり、スターリンに強請って同族を討つ戦争まで起こした。この戦争が国際戦に発展して数百万人の死傷者を出す悲劇をもたらし、38度線は休戦線として分断が固着され、分断の歴史は今日まで長く残酷に続いている。

 わが社会は金日成という存在を無防備に放任したため、彼が捏造した‛巨大な神話’が恰も事実のように横行するように助け、彼の主体思想を信奉する精神疾患者たちが量産されるように放置した。

 われわれは未だに金日成という人間が一人だったのか三人だったのかも分かっていない。彼は普天堡襲撃を指揮した人物だったのかどうかも論難を重ねている。おそらく明確に彼の存在の真実を立証する資料は中国共産党とソ連共産党の秘密文書庫の中で眠っているだろう。

 怪物のように突然変異を起こした一人の人間の限りない権力欲が北韓という国全体をパルチザンのアジトへと変貌させ兵営国家にして、地球上で類例を見られない社会主義王朝の世襲が続いている。

 金日成の神話はその出発から死に至るまで、すべてが虚偽、嘘、操作、捏造、横取り、誇張だらけだ。この恐ろしい嘘の森から資料と証言を通じて真実を追跡した結果がこの本だ。

 追跡作業の過程で多くの方々から身に余る激励と支援を受けた。金日成と関連する様々なアイデアや学問的好奇心を刺激し暇のとき焼酎とおつまみで激励を惜しまなかった李東湖さん、柳錫春延世大教授、本が出る前に本を買ってくださった鄭美鴻さん(元KBSアンカー)、この研究に協力してくださった李孝九LIGネクスウォン副会長、洪ソンミン安保政策ネットワークの代表、李フイチョン教授、そしていつも勇気と激励を惜しまなかった皆さんにも深く感謝する。

 2016年6月、著者

2016/10/15 05:48 2016/10/15 05:48
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